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第147話

竹内さんの煙草がうんと短くなるまで、思い出せる限りの事を話した。 中には多分つまらなかった事もあっただろう。歴史館で見つけた有名な偉い人の名前を言うと、ゴーゴー回ってる換気扇を暫く眺めて、「おう」ってそれだけ。 竹内さんは日本史が弱いという貴重な情報を手に入れた。 「ここ暗いし、終わったなら戻ろう?灰皿持っていけばいいじゃん。」 「あー…それもそうだな。」 やっと動く気になってくれたか。 もー、ここまでが長かった。 流石にそれ以上吸ったら口熱いだろって突っ込みたくなる程ギリギリまで吸い尽くしたそれを水道水で瞬殺。ツートンカラーになった吸い殻を灰皿に落としたその一瞬だけ合わせてくれた瞳を、俺は絶対に離さない。 まさかバッチリ目が合うだなんて思わなかった竹内さんは、すぐに逸らしてしまうんだけど。 「歩くのしんどい?」 「まあ…多少は痛むからな。」 「それって足?それとも尻──。」 「あーしーだ。馬鹿野郎。」 …やっば、超可愛い。やっぱり竹内さんにはいじめられっ子の才能があると思うんだ。元いじめられっ子の俺が言うんだから間違いないよ。 勿論俺は竹内さんが本気で嫌がる酷い事はしないけどね。 前を歩く小さな背中に、心臓がキュッと締まる。まだ慣れない身長差。あんなに長身で見上げてた人が靴脱いだらコレだもんな。 格好良いと可愛いの合わせ技はマジで卑怯だ。 こんなの会社の人が知ったら大変だよ。即アイドル化するの確定だもん。 ……って、居たじゃん。竹内さんの秘密知ってる人。あの忌々しいクソ男。 「あ、なぁ佐々木。」 「どしたの!」 突然呼ばれた事に驚いたのか、それとも脳内再生してたアイツの悪口がバレたと思ってヒヤヒヤしたのか。 自分でもわからないが、とりあえず最高にキレのある反応が出来たお陰で竹内さんは可笑しそうに笑ってくれた。 よしよし、いい感じ。 「悪いんだけど…その鞄から湿布出してもらえるか?」 ソファに座ったらもう動きたく無い気持ち、わっかるぅ。俺喜んでパシられるよ。 足元で形を崩さず自立していた竹内さんの鞄を見つけ、ドキドキしながらチャックを開いた。 ワンチャン昨日着ていた服だとか…奇跡が起きれば使用済みのパンツを拝む事が出来るんじゃ無いかとか、少しでも考えた自分がヤバすぎる。 きっちりと整理されている中身は、仕事関係と思われるファイルやタブレットのみ。 それらを寄せまくった末に生まれた僅かな隙間にぴったりとおさまっている1つの箱を取り出した。 「発見〜!コンビニにも売ってるやつじゃん。薬局あの辺無かったっけ?」 「いや何処で買ったのかは知らんぞ。」 「へ?なんで?」 自らの下心を見透かされたような鞄の中身に、もしかしたらちょっと恥ずかしさを覚えていて そのせいで、いつも以上にお喋りになっちゃったのかもしれない。 会話の流れも考えずに、ノリで返すもんじゃないなってめちゃくちゃ後悔したのは数秒後の話。 「…や、あの……法月に買ってもらった、から…。」 「あ??」 照れてるみたいに顔赤くして、袖は滑り落ちて萌え袖状態。 こんなに可愛い竹内さんの口で紡がれた名前の奴に、ムカつくなって言う方が無理な話だよな。

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