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第161話
昨夜とは何もかもが違った。
まずは場所。見慣れない幻想的な模様ではなく、そこにあるのはヤニで黄ばんだ薄汚い壁紙だ。仕事を終えて疲れた夜も、休日にテレビもつけず寝転がっている時もいつだって俺を囲っていた、慣れ親しんだ景色。
明かりも消さないままでは生活空間が丸見え。
それに加え、俺が大きく膝を持ち上げている此処はソファ。十分な幅はあるものの、いくら何でも窮屈だ。1人で寝そべる時だって、肘掛けに足を引っ掛ける事で何とか収まるサイズ。そんな俺より一回り大きい佐々木が一緒に乗っていれば、狭いのは当然の事だろう。
そして最後に、佐々木の手つき。
「やぁ…っ、めだって!広げん…んぁあッ!」
好き放題に…そりゃもう満遍なく塗り込まれたお陰で、アナルは今頃えらい事になっているに違いない。
ぬるぬると滑るその部位を広げ、空気に晒して遊んでみたり、かと思えば痛いくらいに尻たぶを鷲掴みにしたり。男のケツにロマンなど無いと言い切ってしまう事は出来ないが、佐々木は何が楽しいのか一向にその動作を辞めようとはしなかった。
…違うのに。そこじゃなくてもっと──。
本音を声に出す勇気は無くて、けれど俺はもうその場所の気持ちよさを教え込まれていた。あの時は確かに酔っ払っていて、色々とテンションだとか感度だとかが狂っていたのかもしれない。そんなことはわかっている。
だが法月の言うように、身体が覚えてしまっていたんだ。他でもない、今触れられているこの手に暴かれる快感を。
「…睨んでないで教えろよ。誰に、どこをどうして欲しいのか。」
肝心の窄まりには指一本触れず、目尻の垂れた目元から酔いしれそうな色気を漂わせて。
立派な性格をしているものだ。感心してしまうほどに。
本当に求められたい相手は俺じゃないんだろう?
なのにどうして、そんな事が言えるんだ。
社会を生きていれば、相性の悪い人間と関わる事だって避けては通れない。そういう時に感じるのは、どんな状況に陥ったとしても一人一人違う常識と感覚を持っているという事で。
俺には理解の出来ない事でも、それが佐々木の中では筋を通っている可能性は大いにあるのだ。
あぁ、それなら…今くらいは俺も──。
「…伊織の……中に、欲しい。
掻き回して…その先も知りたい、んだ…っ。」
俺の、まだ俺も知らないような所まで
全てお前に暴いてほしい。
佐々木伊織という高校生にまんまと釣られた大人を、是非とも深い闇の底まで落としてくれ。
這い上がることすら不可能な、地獄の果てまで。
そうすればきっと俺は、この先何年何十年とお前を忘れる事など出来ずもがき苦しんで生きていくだろう。
その時お前を恨んでいるかどうかなんて知らない。今はただ、佐々木の記憶を1ミリだって忘れたく無いだけだ。
時の流れなんかには霞ませられないくらい
お前が他の誰かと幸せになる日まで
残酷に、上手に…騙して。
偽りの愛を求め、自ら広げてみせた後孔に佐々木の腰を引き寄せた。
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