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第163話
竹内さんと繋がれた。念願の、竹内さんと。
俺の下で、俺に酔って、俺を感じてめちゃくちゃに気持ちよくなってくれるこの人を今まで一体何回想像しただろう。
愛してるって言うのは流石に早すぎるかな。可愛いって言いすぎると怒られるかな、それもきっと可愛いんだろうなって。
照れながら、でも愛おしそうに、小さめの口から紡がれる「伊織」はどんな声色をしているんだろうって考えた夜なんか、妙に目が冴えてなかなか眠れなくて。
──なのに、全く思った通りにならなかったこれが現実だ。
気持ち良いのは身体だけ。しかも、俺の方…だけ。
俺の下で息を詰める竹内さんは、微塵も俺に酔ってなんかいない。縋りつくよう背中に立てられた爪は、彼自身の悲痛な心情をそのまま表現していた。
「っいお…待って、ぁ……まだ動かな、で……。」
全身を強張らせて、それでも竹内さんは我慢して、ちょっと仲良くなった店員にレイプされているんだ…しかも年下の。
これ以上卑劣な真似をするなと自らを戒める気持ちと、望みがないならいっそ竹内さんの断れない意志の弱さを利用してしまえと開き直る気持ちがごちゃ混ぜになる。
「動かなかったら…気持ちよくもなれないじゃん。」
始めてしまったのは俺の責任。竹内さんの自暴自棄な提案を断らなかったのだから。
でも、それならせめて一緒に気持ちよくなりたい。身体に心もついてくるように、もう竹内さんがアイツの事で泣かないように、ただ見てるだけじゃなく少しでも支えてあげられるように。
そんな纏まり切らない浅はかな考えで言葉を発したから悪かった。
竹内さんの表情の意味に気付いた時にはもう遅い。
「……そうだよな、ごめ…俺ッ。
平気だから……うごい、てくれ…伊織、」
「ちが、そうじゃな──っ!」
俺だけが良い思いするのは違う。もっと昨日みたいに、お互いに求め合えるようなあったかい空気で…あの続きをしたいと、そう思っただけなんだ。
竹内さんは濡れた睫毛で瞳を隠すと、自ら絡めた脚で俺を引き寄せて腰を浮かせた。女とする時とはまるで違うだろう。自分が受け入れる側であるが為に、動きは酷くぎこちなく、力は抜けるどころかその逆で。
「いっおり、ぁあ゛…は、はぁ……気持ちっいい…?」
食いしばった歯は時折唇をも噛み潰し、白く変色した柔らかそうなそこが震える。泣いている理由は何?俺何にもわかんねえ。わっかんねえけど…
全部、俺のせいだよね。
「もう、いいよ…竹内さん。」
腰に絡む膝を抱え、鼓動のおかしな胸を押し返して身を離す。
竹内さんの身体は汗と精液に塗れ、ひっきりなしに肩が上下していた。
脳の何処かがまだ生きていてくれてよかった。
そうじゃなかったらきっと更に酷い事を繰り返しただろうと思えば、途端に血の気が引いていく。
「……ごめん、俺トイレ借りる。その間に動けそうなら身体…拭いときなよ。」
「………ささ──。」
「痛いことして、ごめんね。」
抜き取った自身は未だ興奮を前面に押し出し、高く持ち上がったままだ。勿論竹内さんも気付いてない訳がないだろうけど、何も言わないでいてくれたから。
下着に足を通しながら部屋を出た。
振り返る勇気なんて、無い。
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