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人工呼吸を求めます②

 数十分ほどそうしていただろうか。ひとしきり涙を流しやっと新しい涙は流れなくなってきたが、まだ悲しみを引き摺って鼻をぐすぐすと啜る。先生は背中を撫でていた手で今度は頭を撫で、耳に口付けた。こそばゆくて目を瞑ると、そのまま子供のように腰から抱き上げられてしまった。ぐらりと身体が揺れ、慌てて先生の首にしがみつく。 「せ、先生っ! いきなり抱っこするのはやめてくださいっていつも言ってるじゃないですか!」 「よしよし」 「もう、聞いてるんですか」 「聞いてる」  絶対に聞いてないし、またなんの予告もなく抱っこするんでしょうね。  そんなことを思いながらも先生の首筋に顔を埋めてすんと匂いを嗅ぐ。先生の匂い。ほろ苦いバニラの香り。例の彼はブルガリブラックという香水を愛用しており、スモーキーなバニラの香りをいつも身に纏っていた。皮肉なことにそれは少し先生の煙草の匂いに似ていた。  抱かされたまま廊下を抜けると、広いリビングダイニングに通された。二人掛けのダイニングテーブルセットと、ラックのたくさんついたテレビ台の前に黒い革張りのソファが置いてある。ダークトーンの家具やカーテンで統一された部屋はおしゃれ……なのだが。衣服や本などが机や床に乱雑に置かれており、なかなかに散らかっている。食品やペットボトルが放置されていたりはしないが、せっかく良い部屋なのにもう少しどうにかならないのだろうか。先生の場合、人が来るから片付けよう……とかは思わなそうですね。  ソファまで辿り着いたのでてっきり下ろされるものかと思ったが、先生は俺を抱っこしたまま自分だけそこに腰を下ろした。向かい合って抱き合ったまま先生の膝に乗せられ、肩口に顔を埋めてぎゅっとさらに抱きしめられる。 「あの、先生。コートとか着たままですし……」 「寂しかった」 「え?」 「一人が……好きだし。冬休みの間くらい会わなくても、気にならないと思ったんだけど……」  コートが脱がされ床に落ちる。中に着ていたオーバーサイズのニットの中に手が忍び込んできて、薄手のシャツの上から背中を撫でられゾクリとした。 「君に……出雲に、会いたかった」 「あ、せんせっ……」  耳たぶをちろりと舐め、そのまま耳の中へ息を吹きかけられて舌に襲われる。丁寧に縁を舐めたり、中まで舌を差し込まれたりして、声を漏らしながら顎を反り返らせてしまう。するとがら空きになった首筋に今度は顔を埋め、浮き出た骨に沿って鎖骨あたりまでちゅっと何度も口付け吸われていく。 「あ、あ……せんせ、や……んっ……せんせぇ……やめ……」 「やだ……? ほしくて、電話してきた……そうだよね?」  背を撫でていた指先が脇腹を撫でながら上昇していき、布地の上からつんと突き出している胸の先端を捉える。優しく爪でカリッと引っかかれ、腰が跳ねた。  気持ちいい。そう、こうして欲しかった。欲しくて欲しくて電話した。  先生に全部忘れさせてほしくて。全部どうでもよくしてほしくて。 「ちゃんと、答えて?」 「あぁっ」  乳首を少し痛いくらいに抓られ、悦びの声が出る。 「なんで……電話してきたの?」 「せんせいに……せんせいに、えっちなとこ、見てほしくてっ……ん、ん……悪い子って、言われたくてぇ……あっ……」  乳首を捏ねられながらなんとか答えると、先生は俺の身体をソファの上に倒し、セーターと中のシャツを一緒くたに胸元まで捲りあげた。この間胸をいじめてもらった時はずっと体操服の上だったのにと、露出した自分の乳首を見ながら期待してしまう。  はぁはぁと息を荒くしながら自分の乳首から目を離せない姿はきっと惨めなものだろうが、そんなこと構っていられなかった。先生はくすりと笑って指の背を胸の上で滑らせるが、肝心な場所には触れてくれない。 「せんせ……や、せんせぇ……」 「昨日の写真……えっちだったね?」 「あっ……だって、先生が……」 「うん。そうだね」  先生の人差し指の第二関節が早く早くと待ちきれず尖るそこにわずかに触れた。たったそれだけのことなのに体に電流が走ったかのよう。 「ひゃっ……」 「抜いてほしかった?」  耳元で囁かれながら、そのまま第二関節でするすると先端をさすられる。内股になってしまった膝がビクビクとその度に反応してしまう。 「僕に……君の写真で」 「そんな、んっ、わかんない……ですっ……でも……」 「でも?」 「せんせいに……かけてもらうの、想像して……一人でしちゃいました……ごめんなさい……」  恥ずかしくてくらくらする。先生のこと思い出すだけで疼いてしまうこの体が、あんな風に煽られて反応しないはずはないのだ。先生にこんな風にいじめてもらって、それから精液いっぱいかけてもらって、そんなことを考えたらもう堪らなくて。  先生といても一人でいても自慰行為ばっかりしてる自分は本当に変態だ。しかもこんな告白をしてさらに興奮しているのだ。 「昨日……したの? それなのに、もう……我慢できない?」  膝を擦り合わせて腰を揺らす下半身を一瞥しながら、太ももを撫でられる。スキニーパンツを履いてきてしまったせいで、固くなっているのがくっきり浮き上がっていてみっともない。生地が黒いから目立たないだけで、シミを作ってしまっていたらどうしよう。 「ごめんなさいっ……一人でしてごめんなさい……ぜんぜん、我慢できなくて、ごめんなさい……」 「そうだね」  微かに触れられるだけだった乳首を突然、きゅうっと抓られる。 「あぁぁっ!」  そして親指の爪を立てられ、爪でカリカリと刺激され、やっと与えられた刺激がうれしくて気持ちよくて腰が浮く。ソファからはみ出た足の指をぎゅっと握って堪えるけれど、もうどうにもならない。 「悪い子、だね」 「あっあっあっ、せんせ、ごめんなさ、ごめんなさいっ」 「嬉しそうな顔。謝る気……ある?」 「ち、ちがっ……! ごめんなさいっ……う、おっぱいきもちよくて……だから、ごめんなさいぃ……」  両手を胸板に置かれ、両方の乳首を親指の腹でくりくりと回すように捏ねたり、指の先で擦られたりして気が遠くなるほど気持ちがいい。先生がこんなに触ってくれてるのも嬉しい。口も閉じれず喘ぎ続けた。 「おっぱい、きもちい……せんせぇ、きもちい、です……すき、すき、ちくびすきぃ……」 「僕にやらせて……本当に悪い子だね。自分でする、約束は?」 「あっ、おちんちん、おちんちん扱きたいです……! せんせぇ、しこしこしたいです、せんせぇ……」 「いいよ。出してあげる」  左手は胸を弄ったまま、右手だけで器用にズボンの前が開かれずり下ろされた。窮屈で早く出ていきたくて仕方なかったそこは勢いよくぼろんと姿を現し、先端から我慢汁を垂らして早速自分の腹を汚す。先生が脱がし終えていないのに俺は我慢できずに、ズボンから足を抜きながらすぐに男性器に手を伸ばした。  既に糸を引いているというのに、扱きあげるとさらにとろりと我慢汁は溢れていく。ズボンを脱がし終えた先生にまた乳首を両方転がされながら、無我夢中で扱いてだらだらとだらしなく我慢汁を垂れ流す。 「あぁぁ……あぁーっ……きもちいぃぃ、あぁー……しぇんしぇ……おちんちんもぉ、おっぱいもぉ、きもちいですぅ……」 「ひどい顔」  そう言いながらも、可愛い、と耳に口付けしてまた舌が這う。首の後ろがぞくぞくする。ぺちゃ、ちゅ、ちゅ、と耳に響く音もたまらなくて、扱いていないほうの腕を先生の背中にまわしてしがみつく。 「あ、あ、あ、あ……ん、いくのやだ……まだ、まだいきたくないっ……」  まだまだ味わいたいのにだんだんと登りつめていくのがわかり、扱く手に緩急をつけて調整する。それなのに先生は乳首に爪を立て、耳たぶから上まで耳の縁を丁寧に舐め上げてくる。 「ひゃ、せんせぇ、あ、それだめっ……!」  首を横に振っていやいやしているのに、先生はその長い指で乳首から脇腹までをすーっと撫でたと思ったら、顔を胸元へ下ろしていった。  え、うそ……先生が舐めてくれる……?  先生の唇から赤い舌が覗く。ざらざらして先の尖ったやらしい舌。待ちきれなくて胸を張って近づけようとすると、上目遣いの先生と目が合った。 「おねだりは?」  先生は本当にいじわるだ。だいすき。 「あ……おっぱいなめて……俺の、おっきいちくび、なめてください……」  口の端を引いて意地悪く笑い、ふっと息をかけてくるのでビクンと体が震える。 「どうしようかな」 「や、なんでぇ……せんせぇ、なめてくださいっ……やだ、やだぁ、ぺろぺろしてくださいぃ……」  我慢できなくて自分の指を噛み、目を涙に滲ませながら懇願する。先生は舌を引っ込めて、ちゅ、と先端に口付ける。 「かわいい」 「んっ……」 「淫行教師……になっちゃう?」 「も、もう手遅れですよぉ……」 「それもそうだね」  もう一度だけちゅっとして、限界まで尖った乳首を舌の表面でべろりと舐め上げられた。 「あぁっ!」  腰が浮く。そして浮いた腰を下ろす暇もないまま、今度は舌先を尖らせてチロチロと何度もそこを往復し舐められる。全身に甘いのに鋭い感覚が広がって足の力が抜け、カエルみたいながに股になってしまって恥ずかしい。ゆっくりと扱いていた手もたまらず動きをまた早めていく。  先生の白い肌に赤い舌が映える。俯いた瞼から伸びるまつ毛が長く黒々としていて綺麗。高い鼻が肌を滑ってくすぐったい。声を漏らしながらじっと見つめていたら目が合って、微笑んでくれる。  先生かっこいい 。こんな素敵な人にこんなエッチなことされてる。 「あ、あ、いっちゃう……先生っ、いっちゃうぅ……」  下半身からちゅこちゅこと水音が響く。もうどろどろだ。 「イキなよ」  低い声と共に歯を立てられ、じゅっと吸われて……初めて舐めてくれるのにどうされるのが好きなのかもうわかってくれてる。舌でぐりぐりと押し潰されるのも大好き。  でも、でも違う。このままイキたいんじゃなくて。 「先生、おねがい、が……っ」 「なに?」 「せいえき……かけて、ほし……あ、精液、せんせいの、せいえき……」 「ここに?」 「あっ……」  ちうと吸われながら、手で遊んでいた乳首を指で弾かれ少し痛くて目を閉じる。でも頑張って薄目を開け、小さく頷いた。 「そんなに……ほしいの?」 「ほしいですっ……今日は、一緒にイキたい……です……」  先生は俺の顔をじっと見て、どうしようか考えている様子だった。  本当はお尻の中にほしいと言いたいのを我慢しているくらいなのに、胸にかけてもらうのもダメなのだろうか。昨日かけたいって言ったのは先生なのに。  舐めるのをやめてしまった先生の代わりに、唾液でぬるぬるになったそこを自ら指先で捏ねる。自分でおちんちんとおっぱいをいじめながらなんて淫らなお願いしてるんだろう。 「せんせぇ、おねがい、あ、おねがいします……はぁ、あっ……ここに、んん、おっぱいに、かけて……先生のせいえき、ください……!」 

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