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台風警報②
終業のベルが鳴る前に体育の授業が終わり、昼休みになるのも待てずに保健室へと走り出した。廊下を走らないなどと気にする余裕もなく、まだ生徒が出てきていない校舎内を駆ける。息を切らしながら保健室前に着き、中を覗いてみると少し猫背の高い背中があった。それを見ただけでとてつもない安堵感に包まれる。扉を開き、先生の背中に飛びついた。
「いずも?」
背後から突然抱きつかれた割には冷静に、先生は肩越しにこちらを見上げた。振り返るために椅子を回転させるのと同時に先生の前へ跪いて、その膝に頭を乗せて子供のように甘えた。
先生の大きな手が頭を撫でるが、山下が前に“ 加賀見先生の手ってデカすぎでバナナの房みたい”と大笑いしていたのを思い出した。さすがにそこまでじゃないでしょう、と返したがあんまり笑うものだからこちらも釣られてしまい、二人で笑い合ったことがある。面白いことも言えないし何でも真面目に返しがちな自分に、彼はよく冗談を言ったりして笑わせてくれた。あんなことするタイプの人間ではないと思っていたのでショックが大きい。
「なにか……あった?」
「先生、あの。いま俺、どんな顔してます?」
俺の問いに先生が撫でていた手を滑らせていく。顎に触れて顔を上に向かせ、指の背で頬を撫でる。
「かわいい、顔」
それだけ言って手はまた首の上を通過した。そして髪を耳にかけて耳たぶを親指でさする。くすぐったさに肩をすくめるとふっと笑う声が聞こえた。
「かわいい……けど、ちょっとえっち」
「先生が触るからですよ?」
「もっと……さわる?」
人差し指から小指まで使って、その指先が耳から首筋を撫でていく。あ、あ、と声が漏れる。ゆっくりと通過した指はジャージのファスナーを首の下まで下げ、Vネックの襟元から手を差し入れた。長い指は少し手を入れただけで気持ちがいいところに到達してしまう。すでに尖ったそこをコリコリと転がされ、先生の膝に顔を埋めて声を我慢した。
「ん、んっ……せんせ、や……だめです、先生、いまだめ……」
「うん。そろそろ人が……増える、ね」
先生が机上のデジタル時計を見ると調度、終業のチャイムがなった。この後は昼休みだ、生徒も教員もわっと一斉に出てくる。
先生の手が離れていく。けれども俺はその膝から離れられなくて、痩せた硬い太ももに顔をすり付ける。行きたくない。こんな悪戯されてしまった後に戻ったらまた変なこと思われる。
「休んでく?」
先生がまた優しく頭を撫でるので、小さく頷いた。
「ベッド……使って。人が来なそうなら、顔……見に行く」
さすがにくっついてはいられないかと残念に思いながら廊下を見やる。まだ人が歩いていないのを確認して、先生に手を伸ばした。
「抱っこしてください」
「うん? 甘えん坊、だね」
先生は目を細め俺の体を抱いた。ふわっと身体が宙に浮く。落ちないように首にしがみつくと煙草の香りがした。普段人に甘えられない性分だが、先生にはたくさん甘えてしまう。何を言っても許してもらえるのがわかるから安心してわがままを言ってしまう。
先生に抱っこされて真ん中のベッドへ運ばれ、そっと下ろされる。先生は前髪を上げて額をおさえた。そうして、熱くないねと瞼に口付ける。先生が行ってしまうのが嫌でその手をゆるく握るがすり抜けていき、あとでねとカーテンを閉めて行ってしまった。
眠くはないが疲れてしまったので、横向きに寝転んで目を閉じる。廊下からいくつもの足音が響く。何度か保健室の扉が開き、教員や保健委員が用事を言いつけては去っていく。先生はなにか頼まれる度にやだと漏らしており、なんだか可愛くて布団の中で静かに笑った。しかし先生はなんだかんだ自分の仕事はきっちりやることを皆も把握しているらしく、特に気にせず去っていく。信頼されているんだ、よかった。
誰かと話す先生の声や、キーボードを打つ音など、その気配を感じているだけで幸せな気持ちになる。前々から思っていたが先生のタイピングは鬼のように速く、普段ゆったりまったりとしているテンションと噛み合わなすぎて面白い。ずだだだだだだって凄い音がしてる。本当に変な人。
こんなに先生のことを愛しく思うのに、まだ俺が先生のことが好きだと納得してくれない。今では身体が疼かなくても先生の傍にいたいのに。
「せんせー!」
扉の滑る音と共に威勢のいい声が聞こえ、その聞きなれた声に思考が止まる。
「いずもんいる? 体育の時に調子悪そうだったんだけど、教室に戻ってないんだ」
「そこで……横になってる」
粗野な足音の後、先生の静かな声が響いた。何も言わないでほしいと願ったが、それは叶わない。
「マジで? やっぱ体調悪かったんだ。いずもーん、大丈夫?」
こちらに入ってくる前にと布団を頭まですっぽり被り直した。わざわざこんなところまで追っかけてきて何を考えているんだろう。先生だっているのに何かされたらどうしよう。いっそ起き上がったほうがいいだろうか。
近付いてくる足音と共にカーテンを引く音が聞こえた。
「大丈夫?」
少し布団から顔を出すと、精悍な顔立ちを崩してほっと安心したような顔をする。そうして中に入りカーテンを閉めようとするので冷や汗が出る。
「山下」
先生の声がして、山下は動きを止めた。
「カーテン……閉めないで」
「え? いいけど、なんで」
「閉めないで」
感情の読めない強い声が響く。山下は少し怯んだ様子を見せたが、すぐにこちらに向き直って近づいてきた。
「腹減ってないの? 鞄に弁当入ってるなら持ってこようか?」
「いえ教室まで遠いですし、大丈夫です」
「そっか。熱あったりする? どっか痛い?」
無遠慮な手が額に押し付けられ、首元まで被った布団に入ってうなじに触れる。気持ち悪い。なんでこちらの事など何も考えずに勝手に触ってくるのだろう。今すぐ振り払いたいが先生もいるし大事にはしたくなく、すぐ離れるだろうとぎゅっと目を瞑って我慢する。
しかし俺の首の細さを確かめるかのように硬い掌がうなじから首の前までも触れてきて、どんどん嫌悪感でいっぱいになった。
「山下、来て」
襟元に少し指先が入って来たところで、先生に呼ばれ山下はあっさりと離れていった。バクバクと早鐘を打つ心臓に手を当てる。いつも通りの顔をしていつもと違うことをしてくる彼が何がしたいのかわからなくて怖い。
「先生、どうしたの」
「お弁当……持ってきて。後で、食べるかも」
「やっぱりあった方がいいよな! わかった持ってくるよ」
快く承諾して山下は保健室から出ていった。でもまた後ほど戻ってくる。先生にお弁当だけ受け取ってすぐに行ってもらうようにお願いしないと。
声をかけようとしたら先生はすぐ近くまで来ており、さっき山下に閉めさせなかったカーテンを閉めた。そして布団を剥いでベッドに膝をついて乗って来たかと思えば、そのまま両手を縫い止めて口付けられた。驚いてる暇もなく舌が入ってきて前歯を舐められ、開けばそのまま奥まで差し込まれる。上顎の奥のほうを舐められると気持ちが良くて声が漏れた。先生は俺がそこを舐められると疼いてくるのをよくわかってる。
唇が離れたあとも口内に指を滑るように奥まで突っ込まれた。舐めてと言われ、舌を出して唾液をたっぷりと絡ませる。先生の長い指は口の奥の気持ちいいところまでたくさん届くので、そうしているだけで息が荒くなり下半身が熱くなってしまう。
「あの子……君のこと。大好き、だよね?」
舌の根っこよりもっと奥をぐりっとされ、腰が跳ねる。どうして口の奥や胸を触られるとおしりの奥が切なくなるのだろう。ほしくてたまらなくなる。
先生に言われてることも聞かずにあ、あ、と声を出す俺を見て、先生は指をそっと抜いた。
「聞いてる?」
「え……わかんにゃ……」
視界が涙で滲む。腰が揺れてるのを見て先生はハーフパンツから伸びる太ももをバチンと思い切り平手打ちした。痛さと驚きにビクンと身体が跳ね、どうしようかと恐る恐る先生を見上げるが表情がなく余計に恐ろしくなるだけだった。
「聞いてる?」
もう一度繰り返される言葉に必死で頷く。
「悪い子」
叩かれ赤くなった太ももを撫でると、するりとハーフパンツの裾から手が入っていく。そのままボクサーパンツの中にまで指先が入り、尻の割れ目に触れる。
「あ、あ、せんせ……おしり、おしりの穴にさわっちゃいます……」
「触って……てこと、だよね? 君の場合」
「だって……せんせいが、エッチなことする、から……先生のせいですっ……」
「腰……浮かせて。そんなに期待……して」
さっき唾液を絡ませてどろどろの指がぷつっと穴にほんの少し侵入する。あのお泊まりをした日以来、中に指を入れられたことはない。また先生に掻き回してほしくて、腰を揺すって一生懸命指に擦り付けた。ぷつっぷつっと何度も浅く、出入りするとも言えない刺激を与えられる。
「山下……くるよ? いいの?」
「いいです……」
表面に先生の指を撫でつけているだけで気持ちよくてふわふわしてしまう。先生は指を動かしてくれないので、オナニーするみたいに自分でヘコヘコと腰を上下に動かして先生にとろとろになってきたおしりの穴をなでなでしてもらう。
「出雲……そんなことして。それじゃあ、変態……だよ? 悪い子、だよ?」
「あっ、あっ……せんせぇのゆび、きもちい……せんせぇのゆびで、おなにー、きもちい」
「スイッチ……入っちゃったね? かわいい」
可愛いって言ってもらって奥がキュンとする。それなのに先生は指を入れてくれない。ほしくて指に押し付けるように腰を押し進めるが、上手くできない。ほしい、ほしい、と泣きそうになりながら腰を揺する無様な俺を見て、先生は笑った。
「ほしい?」
「ん、ん、ほしいです……なかも、なでなでほしいです……」
「じゃあ……山下が、来たら。もう、きみに……自分に関わるなって、言える?」
さっきまでこんなことになってどうしようと、これからどう付き合っていこうかとあんなに頭を悩ませていたのに、餌をぶら下げられたらそんなに簡単なことでいいのかと拍子抜けしてしまった。勝手にあちこち触れてきて気持ち悪いし、一度こんなことがあったら元通りになるかもわからない。欲しがりでとろとろになった思考でそれは願ったり叶ったりだと思った。
「言う、言いますからぁ……せんせい、ゆび、おゆびくださいっ……」
「いい子だね」
先生は前髪の上から額に口付けると、ずるりとおしりの穴に人差し指と中指を突き立てた。待ちに待った刺激に膝がガクガクと震える。
「あっ、あっ、せんせ……せんせぇ、ありがとうございます……あぁ……」
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