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甘い監禁生活になりません①
“いずも”と先生が名前を呼ぶのと一緒にその吐息が耳をくすぐり目が覚めた。そのしっとりとした声の余韻に耳の奥がぞくぞくと震える。
先生の顔を見ようと思ったが、身体が少しも動かせない。ただ、先生が髪を撫でる手の感触だけに浸る。
「君のスマホを確認したけど……大事な連絡は、なかった。僕はもう、出かけるから……」
こめかみに口付けを落とされ、包むように手を握られた。そうして拘束したままの縄に触れてくる。結び目を触ったり手を握ったりを繰り返して右往左往するその手は、まるで迷子のようだった。
せんせい、と声を出そうとしたら掠れて音にならなかった。息をついて唾を飲み込み喉を潤わせ、やっと少し音になる。
「先生……このままで、いいですよ。先生がそれで安心できるなら……このままにしておいて下さい」
怠くて瞼を下ろしたまま、意識的に口角だけ上げて笑みを作る。先生は縄に触れるのはやめてぎゅっと俺の手を握った。もう片方の手は耳の縁をそっと撫で、また唇を寄せて囁きかけてくる。
「出雲……ごめんね。いい子で、待っていてね? 帰ったら……解く」
たったこれだけ囁かれただけなのに甘い吐息が漏れ、腰が疼いた。 お尻のあたりがきゅんと締まるとそれが快感の芽となる。
「んっ……はい……いい子で……待っています。いって、らっしゃい……」
勿論こちらが性衝動に駆られているのなどバレバレで、先生はいくつも首筋にキスをし、最後に耳たぶへキスと甘噛みをくれた。
「あっ……せんせぇ……」
「今夜も、可愛がらせて……ね?」
「あぁ……」
一晩眠りについてもまだこんなに敏感なのに、また今晩も執拗に責められてしまうんだ。考えただけでまたお尻に力が入って、もうどうしようもなくダメだった。
最後に口付けを交わして、先生は離れていく。玄関の扉が開閉する音と振動を感じながら、火照り始めている身体から逃れるようにもう一度眠りについた。なんだかとっても疲れてしまった。この疲れがとれれば身体も正常に戻るかもしれない。
けれども昨日から縛ったままの手首や、好きに動かせない肩が痛くて浅い眠りを繰り返すこととなった。
再び目が覚めると、カーテンは閉まったままだがもう外が暗いだろうことが感覚でわかった。夕方の空気……そして、音。鳥が飛び立っていく鳴き声が遠くに聞こえる。
朝からカーテンを締め切った、明かりもついていない暗い部屋。そこにいるのはベッドに入り、下着も履かずTシャツ一枚で手首を縛られた自分。足元には昨日使った玩具やローション、コンドームが転がっている。
本格的に犯罪臭がしてきたなと思いながらも非日常すぎて現実味の湧いていない自分がいる。本当に自分はこのままでいいのだろうか。もう外に出ることはないのだろうか。この大きなTシャツ以外の衣服を身につけることすらないのだろうか。
昨日あちこちから水分を出して喉が、身体が乾いている。とりあえず水を飲みに行こうと、腕を使えないので反動をつけて力いっぱい起き上がる。
手はある程度自由が利くのでドアを開けたり移動したりするくらいは問題ないが、食器棚からグラスをなんとか取り出した後、ウォーターサーバーのレバーが押せず困ってしまった。仕方なく顎を使ってレバーを押し、両手でコップを持って水を飲み干す。
やはり拘束されるというのは不便だ。料理もできる気がしない。歩いて手を使えるだけマシなのかもしれないけれど、現状維持が続けられる保証もない。
ずっと頑張っていた家事もする気が起きず、またベッドに潜ってこれからのことを考える。手首を拘束されただけでもこんなに生活がしづらくなるものなのだな。
でも。
先生の不安がこれで取り除けるなら我慢しようかなと思えた。そもそも約束していたのに外に出たいなんて相談した自分が悪いんだ。先生には俺しかいないのだから、傍にいてあげたい。俺も先生に愛されたい。それに、いい子にしていればまた拘束されずにお留守番させてもらえるかもしれない。
先生が恋しくなってきて身体がまた疼いてくる。奥からじんと熱が広がっていく感じがしてむずむずが止まらない。力を抜いて股を緩く開き、きゅ、きゅ、と中を締める。するとそれだけで前立腺が刺激されて甘い疼きがますます止まらなくなって気持ちがいい。
指を使わないで腰を揺らしてお尻に力を入れるだけでこんなに気持ち良くなってしまうなんて、やっぱりこんな身体じゃもう先生から離れられない。先生の指で撫で回されたい、あの終わりのない絶頂感が欲しくてたまらない。
つま先を伸ばしてぎゅっとシーツに足をついていたら、コツ、と置きっぱなしだった玩具が足に当たる。
昨日使ったのとは違う……つるんとまっすぐしていて、やたらと長い。先生のおちんちんと同じくらいの長さだけど、先生のより細い。これも俺の中に入れるつもりで先生が購入されたのだと思うと、それだけで頭の後ろがぽうっと熱くなってくる。
この太さなら問題なく入るけれど、今まで届かなかった所まで届いてしまう。好奇心が煽られ、前からだと指では弄りづらいし、などと使うための言い訳を考えはじめた時点で手遅れだった。
胡座をかくような体勢になり、足の土踏まずの間でローションの容器を挟んで持ち、手で蓋を開ける。さっきまで拘束されてるからとやる気が出なかったのにいきなりアグレッシブだなと苦笑しながら、足を少し上げて容器を傾けて無事中身を手のひらに出すことができた。それを零さないように慎重に尻穴へ手を伸ばし塗りながら中に押し込んでいく。
「んっ……ん、う……」
背を丸めて腕を限界まで伸ばし、中に指を沈めていく。なんとか第二関節あたりまでは入れることができるが、そこから先は無理そうだった。角度が悪く前立腺には上手く当たらないだろう。それでも指を一本二本と埋めていき、二本の指を中で開いたり、入口の周りを押し広げてほぐしていく。
先生が帰ってきたら悪い子って怒られてしまうだろうか。でもそしたらきっとお仕置してもらえる。
「あっ……! お仕置されるの想像したら……締まって……あ、あ、入口っ……きもちいぃ……」
本当は入口じゃなくて出口なのだけれど、なんて思ったら余計にきゅんきゅんしてくる。入口がたくさん擦れてたまらない。
「せんせぇ……せんせぇ……」
いない人を呼ぶ声と、ぷちゅっぷちゅっと指が出入りする音が暗い部屋の中で虚しく響く。気持ちいいけど寂しくなってくる。もっと訳が分からないくらい気持ちよくなりたい。
でもどんなに指を伸ばしてもいいところにあたらず、もどかしくなるばかりだった。そうしたらやっぱりあの玩具から目が離せなくなる。
「ん……はぁっ……」
指を抜いて、今度は玩具を足で挟んで持ち、コンドームに手を伸ばす。歯で噛みパッケージを開き、空気を抜いて玩具に装着させていく。くるくるとコンドーム伸ばしながら、こんなの全部は入らないと、自分に念を押す。こんな玩具を使って届いたことのない奥までほじくるなんてしちゃいけないと、自分に言い聞かす。
先生とまだちゃんとセックスしてないのに、一方的にずっとずっと撫で回されて可愛がられて、前よりもずっといやらしい身体になってしまっている。我慢できなくて自分でこんな……こんな卑猥なモノまでお尻に入れようとして。
それでも少しまだ怖くて、目を閉じてそっと先端をあてがう。ぐっと力を入れるとめりめりと僅かな抵抗を示すものの、ちゃんと中に飲み込まれていく。
「んん、冷たい……し、あ……あっ……変な感じ……」
おちんちんみたいにずっしりした固さはなく、芯はあるもののやや柔らかい感覚に違和感を覚える。それでいて迎え入れている感じがなく、押し入られているような。異物感が半端ない。
んんー? と思わず首を傾げながら前立腺があるあたりを越して、ゆっくりと沈めていく。中で温まってきたらもうすこし感覚が変わってくるかもしれないと思ってのことだったが、進んでいくにつれ身に覚えのある引っかかりに到達した。ハヤトに挿入してもらうとここを少し超えたところまで入っていたことを思い出し、そこを揺らされる感覚が甦った。
あ、どうしよう、アレしたい。
ん、ん、と息みながら押し回すように奥に進めていくと、感覚は間違っていなかったようでぐぽんっと先端が引っかかりを超え、突然の強い刺激に目の前がチカチカし、背がぴんと仰け反った。
「ひああぁっ……! あ、ここ、あっ、あっ、ここぉ……っ」
久しぶりの快感に腰が浮いて、小刻みに出し入れを繰り返し夢中でそこを刺激した。ざわざわと寒気のような感覚が腰あたりを襲ってきて止まらない。
「あーあー、しゅご、あ、あっ、気持ちい、ぶるぶるっ、ぶるぶるしゅる、あ、あ、あっ」
自分でこんなに激しく内蔵を掻き回して感じてるなんて、変態すぎて恥ずかしい。きっと今誰にも見せられない顔してる。
でも気持ちいい、気持ちいいの止まらない……これが先生のおちんちんならいいのに、おちんちんほしい、先生のおっきいのでぶるぶるしてほしい。
「あぁぁ、せんせぇ、せんせぇのおちんちんほしいぃ……グリグリされたい、ですっ、せんせぇ、せんせぇ……っ」
腰から背中をビリビリと駆け巡る快感に酔いながら先生を求め、でも先生のならもっと奥まで届くはずと喘ぎながらもググッとまた内部へと玩具を押し進めていった。
「あ、あ、あ、ぞくぞくするっ、ぞくぞくするっ」
悪寒が止まらないような変な感じがするのに、奥に侵入させるのを止められない。何度も腰を跳ねさせながら、ぐいぐい奥へ奥へと沈めていく。
「あー……あ、すごい入ってるっ…………うう……ん? んん?」
それまで意外とすんなり入っていったのに、また壁のようなものに到達し、ずんと重い痛みを感じた。試しに先端でぐりぐりとえぐって中の様子を伺うが気持ちいいよりも痛みが走る。ここが一番奥? え、でも腸はずっと続いてるのに奥ってなんだろう。
教科書やら何やらで見てきた人体構造図を思い浮かべる。直腸から大腸へ繋がる……角?
「え、あ……そんな、奥まで……そんなとこまで、入ってしまってる……?」
くいくいと玩具を上下させて刺激するが、やっぱり鈍痛が走る。ちょっと怖いしさっきのところでしようとゆっくりとその場所まで引き抜く。
しかしその時、玄関からガチャガチャと鍵を開ける音が響いた。そしてそれに気がついた時にはドアが開き、屋内の空気圧が変わるのを肌で感じた。
あ、やだ、どうしよう。悪い子って本当に怒られてしまう。今夜も可愛がってくださると聞いていたのに。
いつも通りなら洗面所へ行ったらすぐ寝室に来るはず。どうしたって片付けなどできない。
とりあえず玩具だけでも抜こうと思ったら、くぽんと引っ掛かりを通過し、ひあっと大きな声を出してしまった。しかも強い刺激に襲われてすぐに動きだせない……太ももがガクガクと震える。
「あ……あ……」
余韻に我慢できず情けない声を漏らせば、寝室の扉が開いて廊下の明かりが入ってきた。眩しくて目を閉じながら、玩具は挿入したまま剥いでいた布団を手繰り寄せ、急いで身体を包もうとする……が、拘束されているため上手くできずに手間取っていたら、先生がベッドの上に乗ってきてせっかく足元までかけた布団は剥がされ、また仰向けに身体を開かされてしまった。
無表情のまま俺の上に覆い被さってきた先生は、挿入された玩具に触れぐっと奥に押し込む。
「んんん……っ!」
あまりの刺激に仰け反り声の出ない俺を見て、先生はやっと口の端を吊り上げて笑った。
「なに……やってるの?」
ぐぽ、ぐぽっと奥を激しく突き立てられ、息ができずにビンと仰け反りながら身体をあちこちに向けて快感に耐える。
「ごめんなしゃ……っ! お、あっ、ごめんなしゃひいぃ……」
「謝らなくて、いいよ? 寂しかったね……僕も早く帰りたくて、仕方なかったよ?」
玩具を動かす手はやめないまま、唇にキスをされた。怒っていないことに安堵し、甘えたくなって口内に舌を入れて先生の舌先をなぞる。
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