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恋人になれたらよかった⑥ ※先生視点

 空になった器を片付け、冷蔵庫から瓶ビール一本取り出し栓を抜いた。そのまま一口飲んでから出雲に持たせ、自分はその落ち着かない身体を横向きに抱き上げる。  出雲は青いラベルをゆっくりと指でなぞりながら瓶の口に鼻を近付ける。しかしアルコール臭がきつかったらしく眉間も鼻根もくちゃくちゃにして顔を顰めた。あんまり可愛い反応にこれからいじめようと思ってるのに吹き出しそうになる。アルコール度数九パーセントとビールにしては強いため、缶チューハイ一口でへろへろになる出雲には厳しいだろう。 「それはね……修道院で作られてるビール」 「修道院で……?」 「そう。修道院の井戸水から作られてる。君を、観察しながら飲むのに……ぴったりだと思ってね」  骨格の整った綺麗な身体と張りのある瑞々しい肌の間にある、黒く艶のあるグロテスクな穴。修道女のように清らかで従順なのに、後ろめたいほど貞淑とは程遠い。そんな君を眺めながら飲むのにちょうどいい。  保安灯の淡い光だけに頼った薄暗い寝室のベッドに出雲を下ろす。どうにかしないとシーツからなにから酷い有様だった。今更だが吸水マットが必要だったなと思いつつ、クローゼットの一角に収納してある玩具類を漁る。出雲と遊ぼうと色々用意してしまったが、全部使うことはなさそうなのが残念だ。  選んだモノとローションを手にベッドへ戻るとまだ僕が下ろしたままの姿で、ビールを大事そうに両手で持って大人しく座る出雲の顔に緊張が走る。今から自分で自分の体内に挿入しなければいけないものを目の当たりにし、見ていられなかったのかふいと顔を背けた。 「そんなに、怖がらなくても……君なら、簡単に入ると思うよ?」  持ってきたものを出雲の膝の上に乗せビールを受け取ろうとしたら、何故か出雲は素直に僕に渡さず、瓶の口にに唇をちょこっと乗せ、そぉっと瓶を傾けた。小さく喉仏が上下し、ため息をついたあとやっと僕に差し出す。 「おいしい?」  眉間に皺を寄せているのをわかっているのに聞けば、やはり首を横に振る。もっと飲みやすいスッキリしたものやオレンジピールの入ったものもあるが、これは苦味が強いので当然だろう。頭を撫でてやってからベッドボードを背もたれにして座り、後ろから肩を引き寄せてその小さな頭を開いた足の間、太ももに乗せる。僕を見上げるその頬はすでにほんのり桃色をして、前髪をあげてすべらかなおでこを撫でると温かかった。子供みたいなおでこだ。 「Tシャツはそのままでいいから……下着、脱がないと」 「先生、ちゃんと見てて……くださいますか?」 「見てるよ? 頭撫でていてあげるから……頑張れる?」  出雲はとくに頷いたりはせず、履いたばかりの下着を下ろし、大きく股を開いてその真ん中で拡がっているだろう穴へローションを塗りたくる。吐息を漏らしながら指でいじり、どんどんローションを中に足していく。 「あ……あ……なか、ひらいて……る……やだ……」  閉じきらないだらしない自分に触れ、今にも水の溢れ出しそうなグラスのように不安で瞳を濡らし揺らめかせる。それでもそこには確かな熱が帯びていて、動かす指を止めることはできないようだった。気持ちよさそうに腰を上下させながら、くちゅくちゅと水音を響かせる。触れた額が汗ばんできたので、手のひらで軽く拭ってあげると目が合った。 「せんせぇ、せんせぇ……? きもちい、おしりきもちー……」 「がばがばになっても、ちゃんと気持ちいい? よかったね」 「や、ちがうぅ……がばがばじゃないっ……」 「ほら、これは?」  出雲の膝から落ちた球体が連なった玩具……奥まで届くよう柔軟な素材でできたアナルビーズを差し出した。  出雲は濡れた瞳でそれを見上げるが、また顔を逸らしそのまま首を横に振る。僕がいない間に玩具で遊んでいたくせに。見慣れぬ形状が嫌なのだろうか。 「嫌になっちゃったの?」 「しょれこわい……」  顔を背けてもまた出雲の目の前に見せつけるが、また目を逸らす。追っかけても結果は同じ。 「へぇ? できないんだ」  頭を撫でていた手で髪を掴んで顎が反るほど上を向かせて顔を固定するが、それでも目を細めてまともに視界に入れようとしない。  しかしまだ反抗するのかと思った矢先、目を細めたまま出雲はそれを受け取った。見た目が嫌なのか、あまり見ないようにしながら手に広げたローションをそれ自体にも塗りつけていく。艶のあるビーズがますます濡れて表面がテカテカと光っていくのを見て出雲は肩を竦めた。 「そんなに怖くて嫌なのに……やるの? いいよ? 頑張らなくて」 「いれ……ます……いれたら、きもちいい、から……いれる……」 「なんでそんなに……頑張るの?」 「なんでって……せんせいがっ……」  ぐすりと鼻を鳴らしながら、細めていた目を開いて僕を見上げる。眉根を寄せ、困惑する表情は痛々しい。しかしそのまま何も言わずに見つめていれば、飲んだら死んでしまうと知っていながらも毒物を摂取するように、戸惑いと決心を複雑に絡めた表情をして玩具の挿入を始めた。瞼を下ろし、恐る恐る中へ押し込んでいく。まず一粒が入ると深いため息をついて、また一粒一粒をゆっくりと自分の中へ収めていく。  その度に窄まりが拡げられ閉じてを繰り返す快感に甘い声を漏らして、どれほど嫌がっていても結局はすぐに毒物に染まる。 「君は簡単だね。僕の言うこと聞くのも、苦じゃないのだろうね。だから何でもするの?」  掴んでいた髪を離し、また優しく頭を撫で始める。 「ちが、う……せんせいの、ために……よろこんで……ぁ、ほしいっ、から……」 「他の男とも、ヤるもんね? 今度は何人か相手してみる?」 「や……! それは、や……やだぁ、やだぁ……」 「休まないよ。手動かして」 「あっ、ご、ごめんなさいっ……ん……」  いやいやと首を横に振っていたくせに命令すればまた玩具で遊び始め、その従順な様子は可愛くて愛しいけれど、いつだって少し腹が立つ。 「せ、せんせ……きもちいい、おしり、きもちい……あな、ひろがるの、きもちいぃ……」 「もっと中で感じなよ。いきんで中開いて、奥まで入れて? 僕が入れたとこまで」 「あ、あ、ごめんなしゃ……おくに……おく、いれりゅ……おく、せんせいのおちんちん……ん、はいったとこぉ……」  口では言っているが馴染ませるように浅い場所で出し入れを繰り返すのみで、なかなか奥に入れようとしない。ふーっと細く長く息を吹いて、くっ、と押し込むが、引っかかると怖いようで手の動きが止まるのだ。 「そんなんじゃ、入んないよ?」 「こ、こわいぃ……じぶんでしゅるの、こわい……ごめんなしゃい、つぎは、いれますっ……ん、ん……!」  軽く引いてぐいっと今までよりも強く入れ、じゅぽんと音を立てそのまま二粒勢いよく飲み込むと、ヒッと短い叫びと同時に出雲の背がビクビクッと反り返り、ああぁぁ、とたまらない声を吐き出す。  本当に僕の言うことなんでも聞くなと感心しながらも頭をゆっくりとより慈しむように撫でてやる。 「出雲……がんばったね。ちゃんと入ったね? どこに入ってる?」 「あっ……あぁっ……お、おんにゃのこのとこ……っ……ぽるちお……ぽるちおイキしちゃうとこぉ……ぐりぐり、ぐりぐりしていぃ? しぇんしぇ、ぽるちおぐりぐりしたいよぉ……」 「見ててあげるから……好きなだけ、ぐりぐりしな? すぐに気持ちよくなっちゃって、悪い子だね」 「ああぁ、きもちいっ、ごめんなしゃいぃ……おなかのなか、おんにゃのこでごめんなしゃいっ、きもちい、ぐりぐりしゅるの、きもちいよぉ……っ」  卑猥な言葉を吐き出してるのに可愛くてたまらないなぁ、と頭だけでは足りず涙に濡れた頬や顎まで、顔中撫でながらビールを口にする。やっぱりこのビールで正解だった。  ぐちゅぐちゅに自分で内臓を掻き回しながら、喘ぎっぱなしの口から涎が垂れてきている。瞳は中央へ向いてより目気味だし、またこんな顔して本当にどうしようもない。サイドボードにしばらく置きっぱなしだったスマートフォンに手を伸ばしてまた撮影してやった。だらしない顔も、萎えたままの男性器のもっと下から飛び出すアナルビーズも薄暗いながらにしっかり撮れている。 「出雲、動画。またなにか、可愛いこと言って?」 「ふぁ……どうが? にゃに……アッ、わかんな……ぁ、あっ、しぇんしぇ、ごめんなしゃい、なにぃ……?」 「んー……今、どこに、何が入ってる? 教えて?」  ぽうっとした顔のくせして玩具を動かす手は激しいのが笑えるけど、やらしくてたまらない。カメラに目線くれたらもっと面白いのに。 「おもちゃぁ……おしりに、ぁ、おもちゃぁ……ぐりぐりきもちい、あ、アッ、おしり、おんにゃのこだからぁ……でも、せんせぇのおちんちんのほうが、しゅき、おちんちんのほぉが、きもちぃぃ……」 「いいね、可愛い。出雲は可愛いね。いい子だね。もっと動かしてイクとこ撮らせて?」 「とる? しゃしん? やだっ、とっちゃやらぁ……」 「ははっ、手遅れだよ? ほら、イクとこちょうだい?」  ふらっと弱々しく腕をあげて顔を隠そうとするが、そうはさせない。腕を掴んでシーツに放り、顔をあげさせる。 「顔隠したら動画どこかにあげちゃうよ?」 「やっ、やめてくだしゃい、やら、みせちゃ、や……っ!」 「じゃあイきなよ」 「イク、イクからのせないで、やだぁ、やだぁ」 「頑張って?」  既に涙でくちゃくちゃの顔にさらなる涙がこぼれ、歯を食いしばっていやいやとする姿は嗜虐心をそそる。  僕がこんな風になったのは自分の性癖だけのせいではないと思う。この子のせいだ。この子が何でも言う事聞いて、でもただ喜んで言うことを聞くんじゃなくて泣いて謝って縋りついてくるから堪らなくなる。虐めたくなる。  そんなに泣きながら、でも気持ちよさそうに一生懸命腰を振って、手を動かして。  腰が浮いてきているのを見て、頑張れと心から応援したくなる。馬鹿みたいな話だが。 「アッ、アッ、いいっ、おくきもちぃ、いく、いく、きもちいぃぃ……!」 「出雲? 前立腺の上のほう押しながら擦って。おもらしできるかな?」 「やっ、急にわかんにゃっ……? あ、ここぉ、ここっ? や、あ、おもらしとるの? や、あっ……らめらめらめ、あっ、いっちゃ、あ、あ、出ちゃっ、やだぁぁぁっ……!」  拒否の言葉とともに、可哀想な出雲はつま先をシーツについて腰を浮かせて仰け反り、足をぷるぷると震わせながら上手にイキ潮吹いて、見事におもらしイキ撮影を成功させてくれた。  なんでも要求通りやってくれて怖いくらいだなと思いつつも録画を切って、出雲の頭をそっとベッドに落とし、粗相したばかりの足元へ移動する。  ぱっかりと開いたままの足の間に入り、まだ痙攣する太ももを撫でて玩具を手にしゆっくりと引き抜いていく。そしてまた奥へ押し込もうとした時、手に握ったままだったスマートフォンから着信音が鳴った。  もう深夜一時近い。そもそも着信が来ることなど滅多にないこのスマートフォンだが、非常識な親をもったせいで電話がくるのは深夜が多かった。  無視しようとも思ったが用件は予想できたので電話にでることにした。着信に応じ、スピーカーに耳を当てる。 「なに?」 『生徒に手を出したの?』  単刀直入すぎて思わず笑ってしまった。しかしこの人の前で笑ったことなどないのでスピーカー越しでも息遣いで向こうが戸惑っているのが伝わってくる。 「ふふ……そう。聞いたの? 今も一緒に、いるけど? 写真……送ってあげようか?」 『なんだか楽しそう。そんな声、初めて聞いた。あなたがそんな風になる子……是非見たいわ』  淡々と静かな声で本気なのかよく分からないことを言う。こちらはさっき撮った写真を送って自慢したいくらいだが、送ったらなんて言うだろう。  そんなことを考えながら、この人の反応をなにか期待したり想像したりするのは初めてだと気が付いた。思えば出雲と関係を深めてから初めての電話だ。  出雲は凄いな。本当に僕の感情の動きを変えてしまったらしい。 『でも、もう見た。高校のパンフレットの子って……幸田さんから聞いて。男の子なのね』 「そう。とても可愛い子だよ?」  話しながら玩具の出し入れをゆっくりと再開する。僕が電話しているのに気がついてないのか、あっ、と声が漏れる。スピーカーからは、なに、と聞こえてきてまた面白くなってきて残っていたビールを一気に呷った。 『もしかして……今、セックスしてる?』 「うん? どうだろうね」 『話せるなら、どちらでもいいけど』 「そう。なら、どうぞ」  僕が変わろうと相変わらずの無関心な態度に少し安心した。  この人の反応を期待するといっても、別に関心をもってほしいとか心配してほしいとかそんな物ではなく、ただの興味本位だった。今まで全く興味を持たかなかったことを考えればマシなのかもしれないが、きっとこれ以上この人に近づくこともないだろう。 『あなたのせいで幸田さんに、もう縁を切りたいと言われた。自分の役目はもう十分、果たしたと』  感情の薄い声が憂いを含む。昔からこの人は表情も乏しく話す声も単調だが、それは僕の前だけだ。表現が豊かなほうではないが、クールなだけで友人や恋人といる時は普通に笑ったり怒ったりしている。  そして特に父親のことになると感情的になった。 「僕も……同じことを、言われたよ」 『どうして? 養育費の支払いが終わってもつながりが欲しくて、あなたが幸田さんのところで働けるように頼んだの。あなただってお父さんと縁を切るの。いいの? 今からでも謝罪をしてきて』  つながりが欲しくて、あたりでもう聞くのが面倒くさくなって出雲に入ったままの玩具を引き抜いた。相槌すら打たずにとりあえずスピーカーから耳は離さずズボンと下着を下ろし、出雲の腰を引き寄せる。

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