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恋人になれたらよかった⑧ ※先生視点
今までのように執拗な責め方ではなく単調に、快楽よりも出雲と一つになる事を味わうように、抱きしめて肌との触れ合いを感じながら行為を続けた。出雲を責め尽くしてとろとろにするのは堪らないが、中に入ってるだけでも十分気持ちがいいし幸せだ。
恋人同士が普通に交わることを考えたら、日常的なセックスはこんなものかもしれない。激しく求めている時とは違い、相手のぬくもりや温度をじっくり感じることができてまた違った良さがある。
しかし出雲は甘えた声を出しながらも抱き寄せた肩にかぷっと控えめに噛みついた。ちっとも痛くない、子猫がじゃれついて甘噛みしてるみたいな噛み方だ。
「いずも……?」
名前を呼べば、拗ねたように唇を尖らせて口付けをしてくる。そして下唇にも軽く甘噛みをしてきた。
「物足りない?」
おねだりかなと聞いてみても、首を横に振る。
「もっとぉ……もっとしてくれないと、俺……これじゃあ……」
「うん?」
「せんせぇ……俺のこと……ダメな子に、してくれないんですか? こんな優しくされたら、俺っ…………やだぁ……」
みるみるうちに顔はくしゃくしゃになっていき、目から大粒の涙が零れ出した。ぎょっとして腰の動きを止め、涙がどんどん道を作っていく頬を撫でる。
恋人の真似事なんか求められていなかったかと、泣いてる出雲をこのまま責め立てれば満足してくれるだろうかと悩んだが、気持ちが切り替わらない。きっと現状を改めてつきつけられて冷静になってしまったせいだ。いつも泣き顔にそそられるのに、目の前にある泣き顔はなんだかそれとも違うせいだ。
「せんせい……っ、もっと、いじわるしてぇ……? いつも気持ち悪いくらい、愛してくれるじゃないですか……」
「君は……僕に気持ち悪いって、言い過ぎ」
「だって、気持ち悪いですもん……でも先生の、俺のこと大好きで気持ち悪いとこ、すき……」
ぽろぽろと涙を流して泣いてる顔はこちらが切なくなるほど可哀想なのだが、気持ち悪いってまた言われたことに地味に傷つく。今だけで三回言われた。撫でてる頬を抓ってやりたい衝動に駆られるが、我慢して額と額をこつんと合わせる。ほんの少し強めに。
「先生……ごめんなさい」
「何が? 気持ち悪いって、言ったこと?」
「違います……俺、全然平気なんですもん。先生に何されても……色んなことしてもらって、気持ちいいし、嬉しくて、幸せになってしまいます……それこそ動画あげられたり、他の男とやってこいくらいの事されないとダメかも……」
「やだよ。僕が嫌だ」
相当キレたらそういうことをする可能性もあると思うが、通常僕だってそんなことを望んでいるわけじゃない。君が人の目に触れるのだって嫌なのにそんなことさせたいわけないじゃないか。
自分が君にそんなことをしない為にも手放したいのに、進んでやったら本末転倒だ……と、こちらは考えているのに。出雲はまだ涙に濡れた瞳でぽぉっと宙を眺め、そうかと呟いた。
「俺の如何わしい動画を……適当な、すぐバレそうなプロフィールと一緒にアップすれば……社会的に抹殺されて家を出られなくなるのでは……?」
「本気で……言ってる?」
あまりにひどい発想に意思確認をすれば、真顔で頷いてくる。
僕はそんな展開になっても構わないけれど、どう見ても深く考えてない。自分が何を言ってるのかわかっているのか。いや、今は真剣なのかもしれない。それでいいと心から思っているのかもしれない。
こういう時に自分と出雲の年の差を深く感じる。
現状の受け止め方、一生という言葉の重みが僕と君ではまるで違う。
きっと漠然としていてきちんとイメージできていないのだ。あと何年人生が続くと思っているんだ。
ああ、少しイラついてきたな。望み通りいじめればいいのか。出雲は母親に怒るなと言ったが、僕としては彼女に怒ったつもりはない。何故あの人にはイラつかないのに可愛い出雲に対してこんなに腹が立つのか不思議で仕方ない。僕は本当に君を大事にしてやれないね。
「プロフィールつき? ぬるいな。君が……玉城校三年生の森久保出雲ですって、名乗れば? 制服も着る?」
スマートフォンに手を伸ばし、カメラを起動してコツと奥をつつく。本当はカメラなど起動しなくてもこの部屋にもペットカメラが置いてあるしSDカードに全て記録されているのだが、また気持ち悪いと言われるし撮影している雰囲気も大事だ。
「名前……言って」
手ブレに気をつけながら奥をぐりぐりと捏ね回してやると、さっきまで余裕そうだった身体がビクッビクッとその度に跳ねた。息を吸ったまま上手く吐けないほど感じているのをわかっていながらも、壁の入口をくぽくぽと揺らしてやる。
「アッ……あ、しょこっ、あっあっ……い、いきなりぃ、や、やらぁ……っ……」
「うん? 何されても、嬉しいって……言ってなかった? ほら、名前と学校は?」
「い、いじゅもっ……もりくぼ、いずもぉ……あ、あぁ……たまちろこうこぉ、れす……」
「生徒会長、やってたんだよね? こんなやらしい……お尻の穴して」
「ひゃ、あぁっ……生徒会、ちょぉ……れしたぁ……ごめんなさい……おしりだいしゅきで、ごめんなしゃいぃ……っ」
もちろん何処かに載せるつもりなどは毛頭ないが思ったより興奮を覚え、制服を着せれば良かったなと後悔する。まだ涙が残っている上気した顔にさらに駆り立てられながら、濡れた可愛い顔と、それとは違う卑猥なもので濡れて光る結合部を写す。僕が性器を引き抜こうとすると、抜かないでと吸い付いて皮膚が伸びるのがあまりにやらしい。
「生徒の見本に、ならなきゃいけないのに……何されてるの?」
「おちんちん、おしりの穴にっ……あ、動かにゃっ、あ、あっ、きもちいぃ……おしりの穴に、おちんちんいれてもらって、ます……おちんちんいれるの、きもちいぃ……ごめんなしゃい……おしりこしゅれて、きもちいよぉ」
「そんなエッチなこと言って、いつもより我慢汁流して……変態だなぁ。興奮、してるの? もしかして……見られたい?」
「ちがっ……せんせぇが、興奮、してるからっ……しぇんしぇえ気持ち悪いよぉ、どきどきしゅる……もっとぉ……」
「ひどいな」
こんなとろとろになってまで言われると苦笑せざるを得ない。全くどれだけ人のことを気持ち悪いと思っているんだか。
可愛いけど少しムカつくので右足を持ち上げ肩にかけた。出雲も何をされるか気付き、とろけていた目を見開いて僕を見上げるので、口の端を上げて笑って見せてやった。
「あ、あ……せんせぇ、しゅごいのしゅる? 奥? やだ、撮っちゃやらぁ……っ」
「うん? だめ? まぁ……撮られちゃまずい顔に、なっちゃうもんね? 僕はそれが……撮りたいんだけど」
「や、やらぁ、だめ、だめ……!」
新たな涙を瞳にためながら懸命に首を横に振る出雲に微笑みで応え、ぐいっと腰を押し、曲がり角を探る……つもりだったが、僕も出雲の身体もコツを掴んだのかすんなりずぼっと結腸までハマりこんだ。
その瞬間、出雲の背がこれ以上ないほど仰け反って、舌が出るほど口を開けて声にならない声を上げる。男性器が中できつく締めあげられ、僕も声が漏れてスマートフォンを危うく落としそうになった。ここに入れるとそれだけでイッちゃうのが可愛いな。
「ああ、ふふ……やばい顔、してるね……出雲? こっち見て」
小刻みにぐりぐりと奥に何度も何度も引っ掛けるとその度に太ももが痙攣して、ガクガクと全身が反応して見せる。
「あああ、奥っ、奥しゅご、動かにゃいでぇぇっ! あ、あ、イッてりゅ、イッてるからぁぁっ! きもちいいぃぃッ」
「イクの上手だね……いい子。さすがみんなのお手本、生徒会長……」
「やら、やらぁ! ちがうぅぅ……しょんなんじゃ、アッ、きもち、きもちーよぉ、おかしくなる、子宮のなか、ぐりぐりしゅるのおかしくなるぅぅっ」
「おかしくなりたいんじゃないの?」
シーツを握るだけじゃ収まらないらしく、必死で枕を手繰り寄せ、ぎゅうっと枕を抱き締めて顔の下半分を埋めながらふるふると首を横に振る。子供みたいで可愛くて、大きなぬいぐるみでも与えてやりたくなった。
「ちゃんと覚えてたね、ここが子宮の中だって……男の子なのに、子宮の中気持ちいいもんね?」
「きもちい……子宮のなか、おちんちんはいりゅの、しゅごいぃ、あー、あー、奥、奥きもちい、しぇんしぇえ」
「もう、面倒臭いな……カメラ、終わり。もっと可愛がらせて」
「もっとって……無理、あ、むり、激し、まって、待ってぇ!」
「こっちの方が、無理」
良い画がたくさん撮れたことに満足して、奥ばっかり突くのをやめて浅く擦ったり奥を突いたりと、中のそれぞれの感覚を楽しみながら出雲を責め立てる。もうどこを擦っても叫びに近いように喘いで、無機物に嫉妬してしまいそうなほど枕を抱きしめて押し寄せる快感に堪え震える背が愛しい。
一昨日も二回したのに今日も二回してる自分も中々可愛げがあるものだ。止まらないな。堪らないな。
「この中っ……ずっと、入ってたいな……」
「あぁっ、おれもぉ、せんせぇ、ずっと……っ! おれも、じゅっとほしぃっ」
「うん……離れたくないな。離れたくない。ああ……嫌だ。嫌だ。いずも……好きだよ。可愛い、僕の可愛い出雲。僕のそばに、いて」
君を抱いてるこのベッドでまた一人で眠るのも、君が抱きしめているその枕に頭を預けるのも耐えられそうにない。
二人でご飯の支度をしたキッチンも、君の作った食事が並ぶダイニングテーブルも。よくうたた寝して僕の身体に寄りかかっていたソファも。脚が長くて邪魔だと文句を言われながらも浸かった浴槽も、髪を乾かしてくれた洗面台も。帰宅すればおかえりなさいと駆け寄ってくれた玄関も。
この空間で一人で過ごすのはあまりにも辛い。
肩にかけていた足を下ろして、顔が見られないように出雲の肩口に顔を埋めてそのまま腰を振り続けた。止まってしまったら全て吐き出してしまいそうだ。
僕は人と生きていけるタイプの人間ではない。
人と関わることはストレスしか生じないし、今まで構ってくる人間がいてもうっとおしいと重荷に感じるだけだった。とにかく自分のペースを崩されることが嫌だった。
自分のことや他人の感情を読み取るために本を読み漁りはしたが、人と関わりたいからではなく、不便しないようにだ。
ただ、君だけは僕のものにしたい。
けれどそれは適切な人間関係とは程遠い。僕は君を所有したり支配したいのだろう。
恐ろしい。自分のペースを乱されたくなかったのに、最も乱すものに手を出してしまった。
君の言う通り。僕を幸せにできるのは君だけ。しかし君を幸せにできるのは僕じゃない。
恋人とのデートに憧れる君を、好きなことがたくさんあってキラキラと目を輝かせる君を、僕の中にただ閉じ込めるなんてそんなの君の幸せじゃない。だからといって野放しにしてしまえばそれに耐えきれなくてまた君を傷つける。
僕は君を幸せにできない。
君は僕以外の人間だってちゃんと愛せる。
こうなったのが育ちのせいならば、初めて両親を恨む。君を幸せにしたかった。
「いずも……愛してるよ。一生、君の名前を呼んでいたい」
「せんせ……? あ、せんせぇ、まって、せんせぇっ? お顔、お顔見せて……」
「無理」
鼻をぐすりと啜りながら、出雲みたいだなと思って笑ってしまった。笑い声が少し震える。
「いずも、いずも……出すね? 君の中に……少しでも、君の体内に吸収されれば……いいな」
「せんせい、奥……っ……奥に、いっぱいだして……せんせ、だいすき、せんせぇ……っ!」
限界だという身震いと共に顔を上げ、その愛しい唇に自分の唇を重ねた。舌を絡める余裕もない、ただ押し付け、少し吸い付いて。すぐに二人の熱い吐息が混じり合って離れていく。
もっとがっちりと強く抱き締めたくて、性器を抜いて瞼を下ろしてゆったりと肩で息をする細い身体を抱きしめた。自分の身体の中に密着してそのままくっついて中に入りこんでしまうんじゃないかというほど、隙間なく抱きしめる。出雲が瞬きしている気配が腕で感じ取れるほどだ。
その瞬きのゆったりとした間隔すら愛しい。
出雲はふらりと腕を上げて、自分を抱く僕の手を撫で、次に頭を撫でた。つむじより少し後ろくらい。君に頭を撫でてもらうのはある意味でセックスよりも気持ちがいい。
「出雲……出雲……」
「はい……ここにいますよ……先生」
「デートしよう」
「えっ……」
「深夜のコンビニ……特別な感じがするって、言ってたよね? 僕も、行ってみたいな」
絶対頷いてくれると思ったのに、出雲は腕の中で首を横に振った。
「嫌です。この家から出ません」
何か込み上げてるような声の響きを聞いて表情を確認しようとすれば、離れないようにしがみつかれ、再び出雲はぶんぶんと僕の胸板に顔を擦り付けるように首を横に振った。
「嫌です、絶対嫌です。なんですか、なんのフラグですか? 絶対に行きません……!」
完全に涙に濡れた声に、僕の勝手でまた泣かせてしまったと、とても悲しくなった。ここまで僕たちの関係は不安定になってしまった。
もう何も言うことができず、しゃくり上げる背中をただ懸命に撫で続ける。
しかし出雲はひとしきり泣いたあと、聞き逃しそうなほど小さな……まだ涙の混じる声で、デート行きますと呟いた。今度こそと顔を覗きこめば、痛々しいほどに目も鼻も赤くしてまだ鼻をぐずぐずと鳴らしている。
「行ってくれるの?」
問えば、瞼を擦りながら頷いてくれた。ごめんと言葉が出かけたが飲み込み、代わりにありがとうと伝えた。
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