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■はじまり
「信治、やっぱ秀栄館かあ!すげー、俺も特待もらえるだけの能力があればなあー!」
2008年の5月、進路希望調査書を配られた教室は賑やかだ。後ろの席から覗き込んできたのは、クラスも部活も1年の頃から一緒の友人。
「そういう中田はどうすんの?」
「俺はエスカレーターだなあー、府立第一が中高一貫でよかったよー」
「サッカーは?続ける?」
「一応なあ」
「じゃあ試合で会えるじゃん」
「会えても秀栄館様には敵いませんて」
「ほらそこ中田、うるさいぞ」
「俺だけすか?!」
「お前が先に邪魔してたのは見え見えなんだよ」
騒ぎすぎだと担任から注意された中田が拗ねながら席に戻るのがおかしくて、ちょっと笑ってしまった。
当時中3の俺、秋山信治少年はサッカーに情熱を注いでいて、有難いことにトレセン、いわゆる地域の強化選手に選ばれたり、強豪校からスカウトを受けたりしていた。
本気でプロを目指していたし、そこへ一歩ずつ近づく実感が楽しくて、全てが充実した日々だった。
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