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■はじまり
まさかあなたとは思わなかったから、暗闇のなか、襲われながら、あなたは無事だろうかなんて考えてたんだ。
この部屋には元々2人しかいなかったわけで、襲われるのが俺なら襲うのはあなたしかいなかったのは当たり前のことだった。
でも大人が、まして教師がそんなことをするとは思わなかったから。
理解したことはふたつ、声を上げると殴られるから、俺は誰にも助けを求められないということ。
それから、子どもを守る立場にある教師でも子どもを襲うことがあるのなら、子どもはもう誰も信頼できないということ。
暗闇に慣れた視界のなかで、俺を犯す先生をぼんやり捉えながらそんなことを考えていた。
「おい、いつまで床でくたばってんだ。起きろ」
どうして俺を襲ったんだろう。
「先生はほかの生徒にも普段からこういうことをしてるんですか?」
「あ?一発ヤッたぐれえで彼女ヅラして嫉妬か」
「全然違いますしズボン返してください」
「返して欲しけりゃ膝乗れよ」
取り返そうと手を伸ばすとヒョイと躱され、先生の背後に放り投げられてしまった。
面倒。なんなの?
乗ればいいんでしょ。
「ご満足?」
ご要望通り膝に乗って見下ろすと、意外そうに目を見開いた後、にやりとされた。そっちがやれって言ったんでしょ。
「秋山、俺がほかの奴にも手出してたらおまえが何か困るのかよ」
「困る困らないとかそういう話じゃなくて、あっちゃいけないことだからでしょう」
「正義だなあ、優等生らしいこと言いやがって。……そうだなあでも、手が出ちまうかもしれねえなあ。おまえが毎日相手してくれたら、よそ見しねえかもなあ」
「冗談じゃな……っ、や」
後ろに手を回され触られて、思わず体が震える。
反応する体が悔しくて、何より俺が反応するのを見てにやつく先生を殺したくて、こんな、嫌だ。
恥ずかしさと怒りで堪らなくなっていると、先生がおもむろに何か取り出して、顔の前に突きつけた。
「これが何かわかるか秋山、ボイスレコーダーだ。さっきのおまえの声がしっかり録れてる。頭の良いおまえなら、俺の言いたいことがわかるな」
頭をぐいっと掴まれ寄せられる。
「特待も、トレセンも、こんな面倒事が明るみになっちゃどうなるかわからねえよなあ」
目の前が、暗くなる。
「みんなのための犠牲になれるよな、秋山」
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