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■表面張力

「どした信治…」 こういうこと、言ったことないから周りがぎょっとして振り返る。 言ってしまったなと思ったけど、自分から周りに悟られそうなことをしてしまったと思ったけど、でも嫌だったから。俺が大切にしているものとかまで平気で侵してくるこの男が許せなかったから。 後には引けないから黙って先生を見据えるだけ。 さあどう動く? 先生も面食らった様子でしばらく何も言わず、それから眉をピクッと上げてから、すぐに崩して困ったような笑顔を見せた。 意外だった。 「どうした秋山、具合でも悪いのか?……まあいいか、パス練だけなら秋山なしでもできるよな。じゃあグループ分かれて始めて、秋山は三角コーン出すの手伝って」 こちらをまだ気にしながらも列は崩れて散っていった。先生は無表情でゆっくり近づいてきて、校庭の端の体育倉庫を指した。 何も言わない。 並んで歩きたくないから先生の先を歩く。 倉庫まで辿り着いて、鍵を開けてもらおうと振り返った。まあ、コーン運ばせるとか建前で、やり返されるんだろうけど。 「そっちじゃねえよ、裏来い」 「は?」 促されるまま後をついていくと、ぐんっと手を引かれて倉庫裏の壁に背を叩きつけられた。 「………った…」 「なに調子乗ってんのか知らねえけどてめえ自分の立場分かってんのか?」 「……ッ、………犯されてビデオで脅されてる」 「分かってんじゃねえか、良い度胸だなあおい。それともなんだ、あんあん鳴いてるとこみんなに見てほしいってか」 「鳴いてなんか…っちょっと!!」 先生の手が体操服のズボンのウエストに掛かったから慌てて腕を掴んだ。 「なにするつもり」 「黙ってろよ、お仕置きしてやんだから」 「外だし授業中だし!目の前民家だし!」 「誰も気付きゃしねえよ、ああでもおまえ声漏れちゃうかなあ。どうも優等生のくせに感度がいいみてえだから」 「あっ」 近距離で見下ろされる頬と擦れ合ったかと思うとカリッと耳を噛まれて変な声が出た。 倉庫裏で人目に付きにくいとはいえ、目の前にはブロック塀、その向こうは道路を挟んですぐ民家だ。 こんなところで、誰かに見られたらと思うと気が気じゃない。 先生はそんなことお構いなしで、俺のを露出させて扱き始めた。 「ぁ…も、ほんとありえない……っ」 でもやっぱり、先生の骨張った手で刺激されるとやばい…… 声が漏れないようにと抑えているけど、頭がクラクラしてきてそれどころじゃなくなってきてる。 迫る快感に身を委ねて楽になってしまいたい気持ちと煮えるような悔しさが下腹のあたりで戦って、練り合わさっていくよう。 「認めちまえよ秋山、ほんとはきもちいんですって」 俺を見下ろしてくるその顔が許せない、 許せないんだけど、 ついに耐えられなくなって先生の拳の中から飛んでいった白濁を見て、諦めに近い気持ちが滲んでくる。 ああやだ、俺はまたこの人に負けたのだ。

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