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第1話 組織の囚われ人

随分休んでいたみたいで窓を見ると日が落ちて辺りは暗くなっている。隣に気配を感じて視線を向けると黒の姿あった。よく眠っているようだ。 強烈な尿意を感じる。薬が効いているのか体の痛みや怠さは楽になったが、動ける自信はない。 「…起きたのか」 「‥トイレに‥」  黒が布団を剥いで起き上がり、近くのライトをつけた。黒いバスローブに髪を下した姿が黄色い灯で妖艶に映る。左目は眼帯が無く閉じたままの状態で覗き込まれる。 「動けるか」 「…自信はない」  ベッドが軋んだと同時に体が持ち上げられ、お姫様抱っこ状態でトイレまで運ばれた。 「ここまで運んでやったんだ。後のことは自分で出来るだろ」  黒が鼻で笑うとトイレから出て行った。便座に座り用を足す。久しぶりに何かに座った気がして何だか少し落ち着く。 敵のアジトのトイレで落ち着いているなんて、無防備すぎるとわかっていても油断せずにはいられなかった。 お互いに警戒心をとかないままだ。隣で寝ていた時も黒のそばには銃が置かれていた。俺は丸腰なのにそこまでする必要があるのだろうかと疑問に思う。 手を洗い壁伝いで歩き、トイレから出ると壁を背にして黒が立っていた。驚くことに黒が俺を待っていたみたいだ。 「歩けるようだな。先に休むぞ」  そういうと黒はさっさと寝室へ戻っていった。背中を追う様にゆっくり歩みを進める。ベッドにたどり着くと、先ほどのことは幻覚のように黒が寝息を立てて眠っていた。空いているスペースに潜るとまた睡魔が襲い、意識を手放した。

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