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第1話 組織の囚われ人
黒はテーブルの脇に置いてある紙袋を投げてよこした。中身を確認すると銃だった。 俺に武器を渡した意味は何だ。自らの罪の裁きを受けるためか。
「これは‥」
「貴様はこれから私の護衛として常に側にいろ」
「護衛?」
「ここで私の情夫として扱われるだけでは退屈だろう」
恋人でも愛人でもない。黒にとって俺はただの性欲処理道具なのだろう。情夫と言われても仕方がない。だがその立ち位置に甘んじるつもりはない。できる事があるなら、どんな事をしてもこの男の信頼を勝ち取りたい。この男は欲しい物のためなら何でもする。だったら俺も自分のためにこの男を利用してやる。そのくらいの厚かましさがなければ生きていけない。
「俺は刑事としての鼻も効く。首領の役に立ってみせるさ」
「ふん、替えはいくらでもいる。お前の使い道が無くなっても弾除けくらいにはなるだろう」
黒は平然と人を切り捨てられるのだろう。今まで沢山の人が使い捨てにされてきたに違いない。俺もその一人なのだろう。
「そこに貴様の服を用意させた。着替えろ」
「あぁ、わかった」
黒の指差す先を見つめるとソファに服が掛けられていた。情けないことに何から何まで与えてもらう事しか出来ない。
お洒落とは言いがたいシンプルな服に着替えて、ホルスターを肩に取り付けて銃をしまう。
俺は警察とは全く違う世界で生きていく道を選んだ。底辺からのスタートでも構わない。目の前の男から必要な情報を聞き出すまでは生きなければならない。きっと妹は生きている。どれだけ時間がかかっても見つけ出してみせる。その先が地獄であったとしても。
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