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第4話 帝王の盤上

慧と呼ばれた男は背後に手を回し再び手を前に出すと、そこには銃が握られていた。銃口は真っ直ぐレオに向けられている。 「慧、私はレオだ。わからないのか?」 レオの言葉に慧が反応する事はない。レオの側にいた護衛が銃を抜き、銃口を慧に向けた。これでは同士討ちになり自滅することになる。レオが護衛に対して銃を下げるように命じた。 慧という男は明らかに態度が変だ。首領であるレオに躊躇することなく、銃を向けている。それなのに殺意があるように思えない。目に力がなく、先程から一言も話さない。 「慧…君に何があったか聞かせてくれないかな。君の声が聞きたい」 レオはもう一度慧を優しく抱きしめた。レオが離れていった瞬間、慧が銃口を自分のこめかみに押し当てた。そのまま躊躇なく引き金が引かれた。 「慧!どうして…君が自ら命を絶たなければならないんだ‥」 レオは慧を抱きしめながら涙を流した。その場にいた誰もが辛い思いをする情景だ。そんな重い雰囲気の中、一人口角を上げて笑う男がいた。俺のすぐそばにいる、黒だ。その笑顔を見て悟った。黒はとんでもないことをしでかしたのだ。 「黒璃秦、慧に何をした!」 「その男は口の堅く、情報を一切漏らす事はなかった。だから私はその男に薬を与えた。与える薬の量が増えれば増えるほど、徐々に奴の精神が崩壊し始めた…」 黒が悪の所業を自ら語り始めた。聞けば聞くほど、最低最悪な内容だった。レオもただただ絶句していた。だが俺は見逃さなかった。レオの目には明らかな黒に対する殺意が芽生えていることを… 「それが全てか」 「いいや、まだ序章だ。続きを話すべきか」 「全て包み隠さずに話せ」 「良いだろう…その男は自ら薬を求めるようになった。その度に薬を与え、洗脳した。レオ・ベルナールという鷹翼の首領を殺せ、とな…」 レオは話の全てを聞いた後、憎悪と殺意を滲ませて銃を抜いた。「一人残らず鮫牙を殲滅しろ」と一際低い声で組員達に命じた。 鮫牙の組員も銃を抜き、銃撃戦に備えた。最低な形で戦いの火蓋が切って落とされる。

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