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第5話 ひとときの休息

四つん這いになると黒の指が侵入を始めた。指が中を探る様に動く。薬の影響で無理やり犯されたときは解されることもなく突き入れられ裂けるような痛みを感じ鮮血が伝い落ちた感覚が残り、どうしても力んでしまう。 「力を抜け、辛い思いをするのはお前だ」 「‥ッ…ん‥いや‥」 「お前がひどい扱いを受けたことは知っている。だからこそこうしているんだろう」   黒にあの時の行為を全てが把握されていると思うと消えてなくなりたい。 思ったよりも優しい手つきで解され、黒に気遣われているのだと分かった。優しさなど欠片もないと思っていたのに、こんな風に扱われると変な錯覚に陥る。俺は黒に魅了されている。この人が欲しいんだ。 「ん…っう…く‥黒‥あんたが‥欲しい‥」 「簡単に手に入ると思うな」 口角を上げて笑う黒に縋りつくように抱き着いた。自分から欲しいと強請り抱いてくれと思う日が来るなど考えもしなかった。毒気を抜かれ今はただ抱かれることしか考えられない。 黒の指がある部分を掠めた途端、体が跳ね快感が溢れ出た。こんな感覚を感じたことはない。よくわからない気持ちいい波に俺はただ嬌声を漏らすことしかできない。 「んっ!あ‥ぅ‥や‥ン‥」 押し寄せる快楽の波にのまれ達しそうになる。さきほど勝手に達したことを咎められはしなかったが、それでも気に食わなかった。黒の指が増え更なる刺激を与えられる。 「っあ‥ん、も‥あぅ‥」 「達してしまえ‥」 黒の言葉を皮切りに俺の中の最後の理性が砕け散った。せき止めていた雫が溢れだし、絶頂へと駆け上がる。敏感な部分を絶妙に刺激され、焦らされる感覚は何とも言えない快楽だ。やがて視界が真っ白になり吐き出した。 「っん‥はぁ…ぁあ!」 快楽の余韻にのまれ息を整えていると、硬く熱いものが宛がわれた。まだ準備が整えられていないまま、塊が押し入ってくる。 「あ!‥ぅ‥まだ‥」 「お前に拒否権はない」 余裕の表情を浮かべたまま黒が俺の中に侵入してきた。質量の多い塊を受け止めきれず、力を入れると後孔に痛みが走った。鮮血がシーツを染めたのが分かる。 「‥痛ッ‥」 「力を抜けと言っただろう」 「無理…あんたのが‥ぅあ‥」 最後まで言い終わる前に黒が奥へと押し進んでくる。これ以上痛みを感じない為に息を吐き、力を抜いた。押し広げられていく感覚は気持ちが悪い。半分ほど塊を飲み込んだあと、痺れを切らしたように黒が一気に奥まで貫いた。 奥まで納まった塊は暫く動かずじっとしていた。腰を抱かれると、いよいよ動き始めるのだと悟った。 黒が俺の胸をペロリと一舐めしてこちらを見つめている。舌に彫られている刺青を見ている俺と目が合った。 「準備はいいか」 「俺を‥待っていて‥くれたのか」 「途中で寝落ちされないためだ」 素直には言わなかったが黒なりに気づかってくれている。自分に向けて与えられる優しさに嫌な気はしない。 黒の手が内腿を撫で快楽を煽ってくる。撫でられる感覚に身を委ねていると塊が動き始めた。 「っあ‥ん、ぅ…」 ゆっくりと抜き差しが始まり内側から犯される感覚が気持ちいい。再び自身の塊が硬さを帯びて屹立する。素面で後孔の気持ち良さを感じたのは初めてのことで、俺は自分の体の敏感さに驚く。 黒の塊が一回り大きく成長し、凶器のように動き続ける。激しさが加わった動きに翻弄される様に腰を動く。   「浅ましく腰が動いているぞ」 「っ‥あんたの‥せいだ」 自ら浅ましく求めている自覚がある。予想以上に気持ちいい行為に自然と腰が動いてしまう。今の俺に羞恥心などない。もっと激しく感じ、絶頂を向かえることを望んでいる。そんな風に変わってしまったのも全て黒のせいだと思いたい。この男に出会った時からこうなることを本能で望んでいたのかもしれない。 腰を抱かれていた手が俺の塊を握り扱かれる。前も後ろも溶けてしまいそうに気持ちがいい。呼吸が追い付かないくらい、俺は甘い嬌声を上げる。 「っあ‥んく、や‥ああ‥ッ‥ん」 「私より先に達するな」 「無理‥っん‥もう‥イかせて‥」 達するなというのに律動は激しさを増し、扱かれる手も一層激しく動く。我慢を強いられ、頭がおかしくなりそうだ。目前に向かえる絶頂を阻止するように黒が自分の髪を結っていた紐を根元に巻き付けた。焦らされればされるほど快楽は増していく。与えられる行為に翻弄されながら、喘ぐことしかできない。 「私は簡単には満足しない。お前を抱きつぶしてやる」 「やめ‥もう‥外し‥」 許しを請うが黒は外すつもりは微塵もなく、翻弄するように律動し続ける。黒を満足させない限り俺は絶頂を向かえることはできないのだと理解した。律動に合わせて自らも腰を振り乱し、黒の性欲を煽る。 「ん‥ぁ‥黒‥もう‥」 「そんなに私が欲しいのか」 「黒‥あんた‥欲し‥」 名前を呼んだ途端、内壁を抉る凶器が波打った。表情を変えることはないが、黒も俺と同様に息を乱して感じている。暴れる凶器を受け止めたまま、目の前にある顔に手を添える。下から覗きこむように見上げた瞳は欲情が孕んでいた。黒の絶頂が近いのかもしれないと淡い期待を抱く。 「仕方がない‥お前の望みをかなえてやる」 黒が結んでいた紐を解いた。激しい律動が止み塊がゆっくりと引き抜かれていく。このままでは俺は達することが出来ないと思い締め付けた。 「力を抜け、逃したりはしない」 「黒‥抜かな‥」 「く‥抜いたりは、しない」 何をされるのか判らないまま、言われた通り力を抜いて委ねた。黒はギリギリまで抜き、腰を抱えなおした後一気に奥まで貫いた。 「ぅああ!‥ん、や‥」 「そろそろだ。すべて受け止めろ」 激しい抜き挿しを繰り返され強烈な快感が体を支配する。俺も黒も限界が近い。首に押し当てられたままの銃口が離れた代わりに黒の手が首を絞めた。 「くぅ‥ん、かは‥ぅ…」 「殺しはしない」 首を絞められ藻掻く。殺しはしないと言われても、安心など出来ない。このまま絞殺されるのは御免だ。暴れていると絞め付ける力が緩んだ。黒の目を睨む。 「やめろ‥」 「人の話を聞け。絞殺するつもりはない。」   黒から殺意は感じない。頸動脈を圧迫されるだけだ。首を絞める力に強弱をつけられる。何をしたいのか全く分からないが、力が緩められた時に真意を探る様に目を真っすぐ見つめる。 「殺すつもり‥ないのに‥何故‥」 「首の絞め方一つで快楽が得られるからだ。私はむやみやたらに絞めているわけではない」 黒の手で再び圧迫され言葉を発することが出来なくなる。息の苦しさは感じるが窒息はしていない。殺すつもりがないのは本当のようだ。首を絞められたまま続けられる律動に徐々に快楽を感じ始める。 「っ‥ん‥く‥」 自然と目に涙がたまり視界が霞む。こんな快感を味わったことがない。首を絞められたまま、目前に絶頂が迫る。強弱をつけられた律動と絶妙な力加減で絞められる首。 「黒…ぅ‥も‥」 「‥わかっている」 体が痙攣し、無意識に黒の塊を締め付ける。視界がぼやけて真っ白になり黒の吐き出す灼熱を受け止めて絶頂を向かえた。

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