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第6話 忠誠の証

口から高ぶりを離し零れ落ちた精液を拭い舐めとる。上体を起こして黒の上に倒れ込んだ。肩を抱かれたまま体を支えられ息を整える。黒に顔を近づけると唇を奪われた。 滅多にしないというキスを黒は俺にまた与えたのだ。 「どうして…」 「下手くそなりに頑張っていただろう」 ご褒美とでも言わんばかりに唇を食まれた。唇を黒の舌で舐められる。表面に彫られている刺青がちらりと覗いた。口を開くと舌先が侵入してくる。口内を蹂躙する舌に翻弄されながら、自分も舌を絡めていく。 「ん…んん…」 巧みに動く舌を捉え、吸い付くようにキスを繰り返す。激しく貪られるようなキスは久しぶりのことで、黒に与えられるままに没頭する。深く貪りあった舌と唇が離れ名残惜しさを感じた。 黒が不意に右目を閉じたと思ったら、左目の瞼が震え薄く開かれた。 「おまえの求めていたものだ」 「え‥目に刺青?痛くないのか」 「痛みはない‥義眼だからな」 左目には文字があしらわれている。細かく細工されていて読み取ることはできないが、舌のほかにも刺青が彫られていることが知れて俺は満足した。 「俺以外に知っているものはいるのか?」 「…彫師は知っているだろうな。家族の誰も聞いてこなかったと言ったはずだ」 俺だけに晒された秘密をまじまじと見つめる。瞬きをすることのない瞳はこちらを向いているが俺を捉えることはない。光すらも取り込んでいないようだ。 なぜ左目を失ったのか理由を聞いてもいいのだろうか。俺は黒にそこまで信用はされていない。だが誰にも見せることがなかったものを俺にだけ見せたという事は少しは特別扱いされていると思っていいのでは。自惚れかもしれないが少しそう思っていた。 「満足か?」 「もう大丈夫だ」 黒が痺れを切らした為ベッドに置かれた眼帯を取り、左目に被せて紐を結んだ。 眼帯の上からキスを落す。黒は訝し気な表情をしてこちらを見ている。今の行動に特に意味はないが、左目を失ったときは激痛だったはずだから。 怠い体を黒から離し、ベッドの空いたスペースに寝転がる。髪を下ろしている黒は印象ががらりと変わる。妖艶な姿に思わず髪に手を伸ばし、弄ぶようにいじってみた。 「何をしている。満足したなら寝ろ」 「わかった」 言われた通り黒の毛先を握っていた手を離し、布団を被った。今日は底なしの緊張感と殺意に囲まれた中で殺し合いをしてどっと疲れた。命を奪う罪深さを感じながらも、俺は残酷非道な男に抱かれた。 殺してやりたいほど憎いのに心底憎むことが出来ず、むしろ彼の特別な存在で居たいと思う自分が居る。黒が抱く者に嫉妬するほど俺は心を奪われていた。

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