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第14話 与えられる恐怖
薬の代わりに手足を縛られた。そして目隠しをされる。何も見えないし何も感じない。怖くて体が身震いする。
黒が何処に居るのかもわからない。震えて鳴る枷の音だけしか聞こえてこない。
「黒…どこにいる」
返事がない代わりに部屋の扉が開かれた。なにが起こっているのか訳がわからず、ただ打ち震えるしかない。靴音がこっちに近づいてくる。黒の物ではない別の足音だ。
身構えていると背すじを添うように何かが触れた。
「ひ…止めて…」
「安心しろ…ひどくはしない」
「なっ…お前…燈か…」
「気づいたか」
声の主は燈だった。側にいるはずの黒の気配がない。部屋に居ないのかもしれないと思うと先ほどまで酷いことをされたのに急に不安になる。燈が凄く近くにいる気がする。
「なんで居る。黒は…」
「首領なら俺の側にいる…ン…首領まだ」
艶のある声を上げた燈はサラサラと俺の頭を撫でてくる。何が起こっているんだ。視覚的情報がないと今の状況がわからない。
チュッとリップ音が耳にへばりつく。まさか…黒が燈を抱いているのか。
「燈…今どういう…」
「外してあげたいけどまだ駄目だ。あ…っ…首領…」
燈が黒からどういうことをされているのか想像してしまう。俺だけこんなひどい状態にされて2人は楽しんでいると思うと腹が立つ。
「早くしろ。燈…貴様の役目を果たせ」
「…黒…何をするつもりだ」
「くくく…貴様を調教すると言っただろう」
「でも燈がいる」
調教するなら黒と2人でも問題ないはずだ。それなのにあられもない声を上げ感じている燈が側にいるこの状況は一体なんなんだ。
「今の燈はそんな事気にしない。この状況を楽しんでいる」
「な、燈に何した…」
「貴様に与える筈だったのを打ってやった」
「薬を…」
燈は薬を与えられ自らの意思とは無関係にこんなことをしているのなら止めさせるべきだ。だが手足を縛られ自由がない状態では何もできはしない。
この状況を楽しんでいるのは黒だけだ。燈は必要以上に何も言わない。ただ与えられる快感に従順になっている。
「燈は拒んだと思うか?自ら喜んで腕を出した」
「そんな…」
「燈は稀に与える程度だ。それにこれは違法薬物のなかでも軽く催淫効果がある。今夜は薬が切れるまで酷く乱れ狂うだろう」
「こんなことして何が楽しい。人を弄んで…」
黒のやり方が気に食わない。薬で狂わせて主導権を取る。良いように弄んで最後は捨てる。これが破壊の王のやり方のようだ。
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