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第15話 地下の監禁生活

拘束監禁生活を受けて数週間が過ぎようとしている。あれ以来、燈が食事を持ってきてくれる。とても気まずい思いをして目を合わせられない。あんなことをしたのに燈はいつもと変わらない態度だ。 罰を受けると決めて黒は自分から遠ざけるように自室ではなく地下室に閉じこめた。初めて拘束拉致されたときに居た部屋とは違う。部屋の中に鉄格子がしてある。 「おい、飯だ。食え」 「…そこに置いて立ち去ってくれ‥」 「いいや、お前が食うのを見届けろと言われている」 燈は首領の命令に忠実だ。パイプ椅子に座るとこちらをまじまじと見つめてきた。食べ終わるまで帰らないつもりらしい。 銀のトレイには菓子パン半分と粉末のスープを溶かしたものと1切れ程度の肉だけ。とても栄養面に気を付けている食事とは言い難い。それよりも食事をするうえで必要な匙がない。つまり犬や猫みたいな獣のように這いつくばって食べなければならない。羞恥心を煽るには十分すぎる。 腹の足しにもならない食事だがないよりは幾分ましだ。仕方がなく四つん這いになり皿に口を付ける。   「お前、首領に何をした」 「…お前には関係ないだろう」 「答えろ。地下牢に入れられるなんて余程の事をしない限りはありえない」 「忠誠を誓いすべて捧げたふりをして、心だけは明け渡さなかった。自分の意思や欲望で心を満たし首領を信じなかった」 燈は呆れたとでもいうように大きくため息をついた。よく耐えられるものだ。自分の意思も全て捨てて忠誠を誓うなんてできない。燈はそれを平気でやって退けている。 どんな脅しを受けて連れて来られたのか背景は知らないが、心酔することが出来るのか? 「首領は忠誠を重んじる。何よりも信じることに重きを置く」 「黒は信じられるような行いをしてなかった。仲間を平気で裏切る」 「首領は信頼の強さを推し量っていたんだ」 「黒だって俺たちの事信じていないだろう」 初めから黒は誰も信じていない。仲間を駒としか思っていないはずだ。信じてる素振りを1つも感じなかった。黒が俺を信じていたのだろうか。 だが裏切ったと思われていたということは少なからず信頼を寄せていたのだろう。

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