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第17話 掴んだ居処
首領によって組織全員に交際宣言をされて赤面していたが、燈によりもたらされた情報で一気に緊迫感が広かった。
「確かな情報だな」
「はい、スパイからの確かな情報です。致命者を負いながらもしぶとく生き延びて今は入院しているようです」
「引き続き調べろ。そして先鋭部隊は交代で病院に張り込め。確実に息の根を止めるまで戦いは終わらないぞ!」
黒の言葉に士気が上がり、各々が声を上げた。煩いくらいで耳を覆いたくなるくらいの声量だ。解散の合図で皆部屋から出て各持ち場へ戻っていった。黒と二人で取り残された部屋に静寂が訪れる。
「黒」
「周、どうした?」
「いよいよ始まるんだな。最終決戦」
「あぁ、負ける気は毛頭ないがな」
力強く抱きしめる腕に負けないと確信した。そして二人で過ごす未来を想像する。この島を越えてさらに勢力を伸ばし、鮫牙は繁栄し続けることだろう。
残酷非道な男はこれからも変わらず人々になんらかの影響を与え続け、翻弄して行くんだ。
「俺もっと強くなる。黒を守れるくらいに」
「援護射撃せずに済むくらいには強くなってもらいたいな」
「それは悪かったと思ってる。あんたに怪我させたし…」
申し訳なく謝ると意外にも黒はそれ以上追い込んでくることはなかった。これは恋人に進展して初めての変化だ。優しく扱われることも甘えてくることもないが、それでも少しの変化が嬉しい。こんなこと絶対にないだろうと思っていたから。
「これを周に渡しておく」
「何?」
「袋を開ければわかる」
そう言われて開けてみると紙袋の中にサバイバルナイフが入っていた。色気が微塵もないプレゼントだ。
「これどういうこと?」
「最終決戦では銃だけではなく近距離戦闘になることもある。だから念のためだな」
命を守るために渡されたナイフを握りしめて最終決戦に向けての覚悟を決める。黒との未来の為に何が何でも次の決戦は勝ちたい。その為には強くならないといけない。
「もし死んだら…黒は悲しむか?」
「何故それを聞く」
「…いざとなれば俺はあんたの盾になる。そしたら俺は死ぬことになるから」
「安心しろ。お前の後を追ってやる。取り残されるのはうんざりだからな」
黒は少し寂しげに微笑んだ。過去に愛する者を亡くし、先立たれた辛さは十分体験しているのだろう。だからこそ後追い自殺をすると言ったんだ。
そう言われて少し喜んでる俺はどこか歪んでいるのかもしれない。
「あんたほんとおかしいな」
「それは褒め言葉か?」
「あんたらしいね」
穏やかに笑いあった。こんな時間をまた過ごすことができるのだろうか。不安はあるがやるしかない。どんな危険な道も黒となら歩いていける。
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