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第20話 地獄絵図

昨晩結束を固める儀式が行われ、暗いうちにアジトを出た。いくつかの隊に分かれて目的地へ向かう。廃墟と化した古い屋敷の表と裏を固め、既に皆んなの頭に叩き込まれてる見取図を元に先へと進んでいく。 地下牢に着いてすぐ地面にいくつもの血痕を確認した。新しいものから古いものまで様々だ。汚臭の酷い牢を一つずつ確認する。 スパイの情報では地下牢に黒が囚われている筈だ。乾ききってない血痕を追い進んでいくと牢に男が居た。 「燈…」 「あぁ…首領じゃない。だがこれは」 男は目を潰され既に息がなかった。そして血の海の中に黒の髪留めが落ちていた。間違いない。ここで囚われていたんだ。目を凝らして見てみると銀のトレイと料理が床に散乱していた。 あくまで予想だが食事を運びにきた男が声をかけても返事をしない黒の様子に慌てて鍵を開け近づいた瞬間、襲われた。己の野望のためならどんな事でもする黒ならやり兼ねない。 窮地に居ても隙を見せず確実に相手の弱点を狙う。その為なら1ヶ月息を潜めることもできてしまう男なのだ。 「首領は生きている。これではっきりしたな。簡単に死んだりしない」 「でもここから抜け出したなら丸腰だろ。鷹翼の奴らは取り返しに来るとわかってるから武器を持ってる筈だ。素手で勝てっこない」 「だとしたら一刻も早く見つけるぞ」 燈と俺は数名を率いて地下牢を後にした。一階は裏から入った者が探索し、表から入った者は二階を探すことになっている。 二階に続く階段にはいくつもの血痕が連なっている。追うように進みフロアにたどり着き辺りを見渡しすと言葉を失い絶句した。 「なんなんだこれは…」 「血の海だ…」 「何人も死んでる。一人も息してない」 各々思ったことが口から出てしまっている。それだけ恐ろしい状態だった。ナイフで首を切られた者、縊り殺された者。様々な殺し方をされた死体が転がっていた。 屍を超えて先を急ぐと大きな広間に出た。黒く長い髪ではなく肩くらいまで長さの男が鷹翼の奴らと対峙している。 燈の合図で銃を構えて戦闘体制を取った。少しずつ距離を詰めると鷹翼の男と目が合った。 「ようこそ。鮫牙の諸君。ちょうど今、お楽しみを始めたところだ」 ニヤリと口角をあげ不敵に笑う男と対峙する男を背に挑発を間に受けてはいけないと言い聞かせた。目的のためならどんな事でもする。黒のように殺意を押し殺し機を伺った。 「首領はどこに…」 「そこにいるだろう。お前達の目の前にな!」 男が指差したのは背を向けている男だ。背丈は黒と変わらないが服装も空気感も全く違う。別人だと思った。 「くははは、お前ら自分のボスの事もわからないのか。それともその男が以前とは比べ物にならないほど堕落して気がつかなかったか」 面白そうに笑った男は殺意を込めた目をこちらに寄越してきた。男は黒に見えるくらい口調も振る舞いも似ている。冷酷な人間のそれだ。

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