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第26話 進化する鮫牙

黒は最終決戦に向けてありとあらゆる命令を下した。1つは爆弾の作成。そして他の国との友好関係と物資や武器の調達。他国からの応援も取り付ける事ができた。 勿論どんな手を使ったのかはわからないが以前のように脅したわけではないと思う。 「その人達どうやって丸め込んだの?」 「丸め込む?周、勘違いしているんじゃないか。貸しを作っただけだ。必ず返すがな」 「そっか…良かった」 黒がどんな貸しを作ったのだろうか。知れば恐ろしくなるようなことだったらどうしよう。人身売買の斡旋とか麻薬の栽培とか恐ろしいことはいくらでも思いつく。 「お前は訓練でもしていろ。サボっているやつに背中は預けられない」 「わかってる。もう3時間ぶっとうしで今は休憩中」 「容量が悪いな。休憩は1時間に1度は問えr取れ。根詰めてやるのはよくない」 「わかった。ちゃんと休憩する」 もしかしなくても黒は俺を心配しているのか。こんな風に誰かを心配し気にしたことがあったのだろうか。他の誰でもなく俺にだけだとしたらこんなに心躍ることはない。 訓練は燈が必ず手伝ってくれる。当初は嫌がって愚痴をこぼしていたのに、彼も心境の変化があったのだろう。熱心すぎるくらいで息つく暇もない。スパルタすぎるせいで体に細かい傷が出来た。銃以外にも体術や剣術までありとあらゆる戦闘方法を学んだ。燈は戦いにおいてカリスマ性がある。遠距離射撃も100発100中。銃の組み立て訓練も入念にした。 燈は元軍人らしく、戦い方が体にしみ込んでいるらしい。未だ燈に1勝もできていない。燈でそのレベルなら黒はもっと強いということになる。世襲制で継いだ地位でも強さは随一でなくてはならない。もしかしたら黒も軍に所属して訓練していた経験があるのかもしれない。そんな人と肩を並べたいなんて身の程知らずだったと後悔し始めている。 「燈の訓練は辛いか」 「…べ、別に…」 「素直になれ」 「辛いよ。血反吐吐きそう」 「でもお前が言ったんだ。私に並びたいんだと」 黒が優しく抱きしめてきた。とても力強い抱擁だ。頑張れと言われているように感じる。こうやって触れ合うだけでレベル上げ出来たら簡単なのに現実世界はそう簡単じゃない。 でも守られる存在で居たくない。黒に頼られ縋られる時が万一にでも訪れたら俺が支えになりたい。 「言ったからには引けない」 「そうか。なら今してやれることはない」 「うん。でも有難う。元気出た」 黒は満足げにほほ笑んで手を離し、打ち合わせの場に戻っていった。置き去りにされたわけじゃないし、やることが山ほどある状況でむくれてる暇はない。なのにもっと側にいて欲しいと思ってしまう。俺も意外に貪欲だったのかもしれない。

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