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第2話『9日間限定の恋人』(12)俊哉×凪彩(※)
〜side.凪彩 〜
すき焼きとイルミネーションデート翌日の木曜日。
今日は俊 くんが仕事の日だから1人でお留守番。
この家に来て6日め。
毎日が楽しくて本当にあっという間。
でも…あと少しでこの生活もおしまい。
定時上がりで帰ってくると言い残して出かけようとする俊くんに『行かないで』って言ってしまった。
昨日の夜、いつもよりくっついて眠ったからかも知れない。
離れ離れになるのが淋しくてぎゅっと抱きついた。
俊くんは『わかった、凪彩の側にいる』って、何のためらいもなく仕事を休もうとするから、慌てて言葉を取り消した。
そんな俺のワガママで俊くんや会社の人に迷惑をかける訳にはいかない。
『ちゃんと留守番できるから大丈夫』って伝えたら、申し訳なさそうな顔をして頭を撫でてくれた。
『今日こそはすぐに帰ってくるからな』って指切りまでして出かけていった。
俊くんの恋人になれる人は幸せだな…。
俊くんはワガママを言っても面倒くさがる事なく、対等に向き合ってくれる。
例え仕事を休む気がなくても、頭ごなしに無理だって言わない。
ちゃんと気持ちを汲んでくれようとする優しい人。
将来、そんな素敵な俊くんに『愛してる』って言われて、頬を撫でてもらえる人がこの世のどこかに存在するんだ…。
たくさんキスをして、体を繋げて…心も体も丸ごと愛してもらえる幸せな人がいるんだ…。
いいなぁ、その人がうらやましい。
俺も俊くんの『愛してる』が聞きたい。
ぎゅっと抱きしめられて、大人のキスもしたい。
キスのその先も…経験してみたい。
「俊くん…好きだよ…」
水族館デートの時に買ってもらったお揃いのイルカのキーホルダーにキスをする。
俺の頭は俊くんでいっぱいだった。
いつから俊くんに恋をしていたのかはわからない。
最初は大切な契約相手さんだと思っていた。
俊くんの理想の恋人らしく振る舞おうと張り切っていた。
でも…俊くんの好きなタイプと俺に共通点がありすぎて、途中でよくわからなくなってきた。
一緒にいる時間が長すぎて、時々素の自分でいる事もあった。
俊くんがいない時も俊くんの事を考えるようになった。
俊くんの求めてる以上の事を望むようになってしまった。
この気持ちが恋だと自覚してからは戸惑いの連続。
どうしよう、俊くんはお客さんなのに。
この関係は期間限定なのに…。
失恋の傷が癒えたら俊くんはきっとまた恋をする。
俊くんがその気になったら、すぐに恋人が見つかると思う。
俊くんには大好きな人と幸せになって欲しいと思う時と、新しい出逢いをしないで欲しいと思う時がある。
自分は俊くんにふさわしくないと思う反面、心のどこかで『俊くんの恋人になるのは俺がいい』『俊くんに選んで欲しい』って、自分勝手な事を思ってるから。
でも…それは叶わない事。
気軽に恋人体験したいだけの俊くんに真剣に告白したら重いに決まってる。
だから言えない。
そもそもお金で雇われただけの俺には告白する資格なんてない。
一緒にベッドに入っても、俊くんのにおいや体温を感じるとドキドキしてなかなか眠れない。
俊くんに触れたくて何度か手を伸ばそうと思ったけど、グッと堪えた。
俊くんはまだ体の関係を望んでない。
俊くんの嫌がる事をして解約されてしまったら、もう一生会えなくなってしまう。
この気持ちは、何があっても絶対隠し通さなくちゃ…。
毎日そう言い聞かせながら眠りについていた。
でも、俊くんを好きになる気持ちは急加速していく。
美味しそうにご飯を食べる俊くんも、無邪気な寝顔の俊くんも、俺が甘えるとちょっと照れる俊くんも、優しく抱きしめてキスをしてくれる俊くんも大好き。
好きだと思えば思うほど俊くんが欲しくなる。
今夜こそ俊くんに求めてもらえるかも…。
毎日そんな淡い期待を抱きながらベッドに入る。
でも、まだ一度もキスより先を求められた事がない。
日を追う毎に性的な欲求は大きくなるばかり。
冷める事のない火照った体はもうそろそろ我慢の限界。
俊くんに抱かれた時にたくさん感じられるよう、自慰を控えているから…余計に。
「俊くん…会いたいよ…」
俊くんが恋しくて、さっきまで一緒にいたベッドに潜り込む。
もう温もりは残ってなくて悲しくなる。
枕元に畳んである俊くんのスウェットを抱きしめた。
我慢できなくて、罪悪感を覚えながら襟元の部分にそっと顔を埋めた。
俊くんのにおい…。
胸とお尻がきゅうっとなった俺は、しばらくにおいを嗅ぎ続けた。
俊くんのにおいには媚薬成分でも含まれてるのかも知れない。
だんだん体が熱くなっていく。
一度嗅いだらもう欲しくて欲しくて我慢できない。
少しだけ…。
ニットの上から胸に触れると、そこはもうぷっくりして次の刺激を求めていた。
敏感な胸の先をそっと爪で引っ掻いた。
ビリビリと全身に駆け巡る快感。
禁欲生活が長かったから、いつもより気持ちいい。
これ以上はだめ、止められなくなる…。
頭ではそう思ってるのに、体はしっかり反応して、続きを求める。
体の疼きがおさまらない。
そろそろと右手を下半身に伸ばして、デニムの上から撫でてみた。
物足りなくてパンツの中に手を入れた。
えっ、こんなに…?って思うくらい濡れていて恥ずかしくなった。
もうだめ…我慢できない。
俊くんのにおいのついた布団を素肌で感じたくて、着ていた物を脱いだ。
もう夢中だった。
布団にくるまって俊くんに抱きしめられてる状況を思い浮かべた。
「あぁん…俊くん…」
先端のトロトロを全体に塗りつけて、ゆっくり扱く。
『好きだ』『愛してる』って囁いてくれる俊くんを妄想しながら。
俊くんの優しい笑顔や大きな手を思い出しながら。
「俊くん…もっと…」
胸の先を撫でて、こねて、つっついて…。
右手も左手も止まらない。
濡れた音がどんどん大きくなっていく。
本当はお尻でも気持ちよくなりたい。
でも…お尻は俊くんとする時のためにとっておきたい。
まだ実物を見た事はないけど、体をくっつけた時にさり気なくリサーチした俊くんの性器は、硬くて太くて長そうだった。
それを挿れて欲しい。
自分では満たす事ができない奥の方をたっぷり愛して欲しい。
『凪彩は…可愛いな…』
脳内の俊くんが紡ぐ『可愛い』に胸がキュウっとなった。
甘い言葉も優しい温もりも、体への刺激も、もっと…もっと欲しい…。
「俊くん…イク…イッちゃう…。ぁ、あぁぁんっ!」
俺は愛しい俊くんを思い浮かべながら絶頂を迎えてしまった…。
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