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第2話『9日間限定の恋人』(14)俊哉×凪彩(※)
〜side.俊哉 〜
「ご、ごめんなさい…。勝手な事して…」
凪彩 は震えながらポロポロと涙をこぼした。
何かを恐れるような怯えるような泣き方。
過去に責められた事があるんだろうか。
罰を与えられた事があるんだろうか。
見ている俺まで泣きそうになる。
「謝らなくていい。生理現象だろ…」
「でも…俊 くんを起こしちゃったし、それに…」
「それに…?」
聞き返すと、凪彩はハッとした表情をして口をつぐんだ。
慌てた様子でまたごめんなさいを繰り返した。
「凪彩…ちゃんと話して欲しい。何を聞いても怒らないし、凪彩に酷い事もしない」
約束する…と伝えると、凪彩は少し戸惑った表情をした。
大丈夫だと伝えたくて手を握ろうとすると、汚いから…と、手を引っ込めた。
抱きたいと思ってる凪彩が汚い訳がない。
半ば強引に手を握ってうなずくと、また泣き始めた。
「…俺…勝手に俊くんの事、オカズにしちゃったから…」
本当にごめんなさい…と、泣きじゃくる凪彩の言葉が信じられなかった。
「…俺で抜こうとしたのか?」
「うん…。俊くんにエッチな事してもらってるのを想像しながらしたの。俺ね…俊くんが好き。だからどうしても我慢できなくて…。ごめんなさい、雇っただけの俺に一方的にそんな目で見られたら嫌だよね…」
凪彩が俺を…好き…?
それは本当なのか…?
もしそうだとしたら両想いだ。
たまらなくなって凪彩をきつく抱きしめた。
「嫌じゃないし、一方的でもないぞ。俺も同じだ。俺も凪彩が好きだ。凪彩が好きで、どうしようもなくて…。凪彩を想って毎日のように風呂で抜いてる」
「ほ、本当…?」
凪彩も信じられないと言った表情で俺を見た。
「あぁ、本当だ。元々好きだったけど、一緒に暮らすうちにもっと凪彩を好きになって、凪彩の心も体も全部欲しくなった。でも、初日にあんな事言ったから、軽々しく抱きたいとは言えなかった。客に好かれたら迷惑だし、凪彩は俺の好みのタイプを演じてるだけだから、勘違いするなって言い聞かせながら暮らしてたんだ…」
凪彩は話し辛い事も全部話してくれた。
だから俺も包み隠さず全部話した。
黙って俺の話を聞いていた凪彩の瞳がまた潤んでくる。
「俊くんの気持ちが迷惑な訳ない。嬉しいよ…。まだ契約中だけど、これは本心。俺は俊くんが好き。本当に好きなの」
信じて…と、俺の胸に頬ずりしてくる。
「俺も凪彩が好きだ。恋人ごっこの告白じゃないぞ。本気の『好き』だ。俺の本物の恋人になって欲しい」
信じてくれるか…と頬を撫でると、凪彩は本当に嬉しそうに笑ってうなずいた。
「なりたい…。俺…俊くんの恋人になりたい。でも…本当に俺で…いいの?」
「凪彩『が』いい。凪彩こそいいのか?」
「うん…俺も俊くん『が』いい」
ぎゅっと抱きついてくる凪彩が愛おしい。
想いを寄せていた凪彩に選ばれた事が幸せで、この日のために生きてきたんだと、本気で思った。
「ありがとな…凪彩。好きになってくれて」
「俺の方こそありがとう。辛い事…いっぱいあったけど、生きててよかった」
照れながら2人で微笑み合う。
まさかこんな奇跡が起きるとは思ってなかったから、お互いソワソワして落ち着かない。
気持ちも…体も。
「キ、キスしてもいいか…」
「うん…。キスもその先も…全部したい…」
俺の官能スイッチを刺激するように、ゆっくり背中を撫でながら誘うように俺を見つめる凪彩。
俺の名前を呼びながら、硬くなった下半身を太ももに擦りつけてきた。
全部…!
凪彩の小さな唇が紡いだ『全部したい』に体中の血液が沸騰したみたいになって、頭がクラクラした。
俺だって凪彩が欲しい。
欲しくて欲しくておかしくなりそうだ。
「はぁん…俊くん…」
俺の太ももで感じながら、だんだんとろけていく瞳。
手探りで俺の下半身に触れた凪彩は、一気にパンツの中まで手を突っ込んできて、俺自身を撫で回し始めた。
積極的すぎる凪彩に戸惑いつつも、巧みな指づかいに翻弄されそうになる。
「ま…待て、凪彩。1回ちゃんとキスしたい」
慌てて止めた俺をキョトン顔で見つめる凪彩。
いい流れをどうして止めるんだろうと言わんばかりの顔だ。
そうだよな、そう思うよな…。
「ごめんな、凪彩と恋人になって初めてのキスは…ちゃんとしたいんだ」
こだわってごめんな…と、髪を撫でると、凪彩の瞳はみるみる潤んでいく。
「…ありがとう。俺との事…大切に思ってくれて…」
嬉しい…と、キレイな涙を流す凪彩。
そんな事で泣くなんて、今までどんな恋をしてきたんだろう。
凪彩との初めてのキスに価値を見出さない相手ばかりだったんだろうか。
キスよりも体が目的の相手ばかりで、大切にされてこなかったんだろうか…。
「俺は凪彩が好きだ。凪彩の事も、凪彩との事も…全部大切にする」
俺の下半身に触れたままの手を取って、そっと握った。
凪彩も嬉しそうに握り返して、小さくうなずいた。
「好きだ、凪彩…」
「俺も…好き…」
凪彩を大切に想う気持ちを伝えたくて、ゆっくり丁寧に口づけた。
もう何度も触れてきた凪彩の柔らかな唇。
恋人になって初めて交わしたキスは、甘くて優しくて…幸せの味がした。
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