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第2話『9日間限定の恋人』(18)俊哉×凪彩(※)
〜side.凪彩 〜
温かな手が頬に触れる気配がして目を覚ました。
外も明るくなってるから、もう朝なのかな。
しまった、寝過ぎちゃった…。
いつも俊 くんより早く起きるようにしてたのに、熟睡していたらしい。
何度か瞬きをしてから目を開けると、俊くんが優しい瞳で俺を見ていた。
「…おはよう、凪彩」
「おはよう、俊くん」
そのままおはようのキスをした。
「ごめんな、気持ちよさそうに寝てたのに。あまりに可愛いから触れたくなった」
「ううん、起こしてくれてよかった」
俊くんとの時間が増えたから…と伝えると、俊くんが嬉しそうに笑った。
「体…辛くないか」
そうだ、昨日の夜…両想いになったのが嬉しくて、一晩中俊くんに抱かれたんだった。
俊くんが用意したバラエティ豊かなコンドームを全種類使うくらい激しくて濃厚なセックスをしたんだった。
「うん…ちょっと気怠いけど、どこも痛くないよ。俊くんは?」
「俺は平気だ。何なら今からでも凪彩を抱ける」
そう言って嬉しそうに俺に覆いかぶさって下半身を押しつけてくる。
俊くん元気だなぁ。
寝起きでまだぼんやりしてるはずなのに、裸の俊くんにときめいた。
「昨日…このまま…?」
「あぁ、そうみたいだな」
2人とも全裸だった。
力尽きるまでセックスして、そのまま2人で寝落ちしてしまったらしい。
一晩にこんなに何度もしたのは初めてだった。
「とりあえず風呂…入らないか?」
「うん、入る。一緒に入りたい」
俊くんは俺をお姫様抱っこしてお風呂場まで連れて行ってくれた。
どさくさ紛れにくっついて、俊くんのにおいを嗅いだ。
やっぱり…俊くんのにおいが好き。
ホッとするし…ドキドキもする。
離れたくなくて湯船でもくっついたまま。
俊くんの脚の間に座ってバックハグをしてもらう。
後頭部や耳にキスされるとくすぐったい。
初めて一緒に入るお風呂タイムも幸せ。
ベッドでたくさん見たし、触れた体。
でも、明るいお風呂で見るとまた新鮮で格別。
一晩中して欲は満たされたはずなのに、こんなに密着してるとまた欲しくなるから不思議。
俊くんの元気な下半身がお尻に当たるから…余計に。
「と、俊くん…当たってる…」
「…違う、当ててるんだ」
甘ったるい声で囁きながら、俺をぎゅっと抱きしめて、ゆっくり擦りつけてくる。
胸や兆し始めた性器も一緒に撫でられて、だんだんエッチな気分になってくる。
「…俊くん…」
昨日の夜を思い出して体が疼き始める。
俊くんもどんどん硬くなってく…!
結局またベッドに逆戻り。
髪も体も半乾きだけど、そんなのかまってられない。
俊くんが欲しい…!
今度は俺の希望でバックから。
昨日後ろから抱かれた時、俊くんに求められてるって強く感じる事ができたから。
必要とされてるんだ…って実感できて、すごく幸せだったから。
俊くんは俺を大事にしようって思いながら抱いてるはずなのに、夢中になるとピストンが激しめ。
俺はそれが嬉しい。
四つん這いになった俺の腰をグッとつかんで、ズブズブ突かれると気絶しそうなほど気持ちいい。
パンパンって体のぶつかる音がするほど夢中で腰を振る俊くんが愛おしい。
俺の事…こんなに欲しがってくれてるんだ…って思うと満たされる。
結局、精液と汗まみれになって今度はお風呂に逆戻り。
満足するまで抱きしめ合って、お風呂を上がると、14時を過ぎていた。
性欲が満たされると、今度はお腹が空いてくる。
俊くんが醤油ラーメンを作ってくれたから、仲良く一緒に食べた。
お腹がいっぱいになると今度は眠くなってきた。
生理的な欲求ばかり湧いてきて可笑しくなる。
「なぁ、凪彩…」
「ん…なぁに?」
「…あのさ、仕事辞めて…ここに住まないか?」
「えっ…?」
他の事を考えてたから完全に油断してたし、唐突にそんな事を言われて驚いた。
「俺…凪彩の分も頑張って働く。毎日の事となると今みたいな贅沢はさせてやれないかも知れないけど、俺は凪彩と暮らしたい」
真剣な俊くんの表情を見て、ようやく状況がつかめてきた。
俊くんからの同棲のお誘い。
俊くん…本気なんだ。
ただ一緒に住みたいっていう軽い願望じゃなく、俺の人生も背負ってくれようとする決意がうかがえた。
そこまで愛してくれる俊くんの気持ちが嬉しい。
俺も俊くんと一緒に住みたい。
でも…それは『今』じゃない気がした。
「俊くん…あのね…」
「ん…?」
「俺…今までね、何もかも中途半端なまま生きてきたの。夢も仕事も恋愛も…まだ何一つ結果を残せてない。それなのに俊くんの負担になる訳にはいかないよ」
「凪彩が負担だなんて思わない。それに結果を残す事は『絶対』じゃないだろ…」
「それは…そうだけど…」
昔、俊くんと同じ事を言ってくれた恋人がいた。
もっと軽い感じだったけど、俺は彼の言葉を鵜呑みにして、仕事も辞めて彼の家に引っ越した。
でも…住んでみたら色々違って、結局上手くいかなかった。
寒い夜、家を追い出されて行く所もなくて…。
仕事も住む家もなくて本当に困ったし、悲しかった。
もう二度とあんな思いはしたくない。
俊くんはその人とは違うってわかってるけど、あの時の事を思い出すと勇気が出なかった。
それに…ほとんど役に立たない俺の面倒を見てくれたオーナーに何一つ恩返しができてない。
恋人ができたからって、急に仕事を辞めるなんて無責任な事したくない。
「凪彩は…俺と住むの嫌なのか?」
「嫌じゃない、嬉しいよ…。でも…そんな簡単な事じゃないから…」
俊くんの気持ちを考えたら、自分の恋人が誰かの派遣恋人になるなんて嫌だと思う。
もし、俺が俊くんの立場だったら、もっと嫌だって言うと思う。
でも、だからって今すぐ切り替えるのは難しい。
「俊くんとの事も、仕事の事もちゃんとするから…。だから…少しだけ時間をちょうだい」
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