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お兄さんとレノー様を助けに行きます! ③
レノー様が目覚めた後、ゲスター様とデュークさんはリアムさんに何処かへと連れられて行った。
レノー様に聞けば、地下にある秘密の部屋で二人を反省させるからと微笑まれるが……詳細はなんだか怖くて聞けなかった。
それから数日が経ちゲスター様とデュークさんの姿を見かける事は無く、リアムさんに恐る恐る質問すれば二度とレノー様や僕の前に現れないように魔法による契約を結ばせた後にゲスター様の実家に突き返したと言われる。
「魔法での契約を結んだからといって本当に大丈夫なんでしょうか? レノー様の命がまた狙われたら……」
「ん~……そうだなぁ。魔法契約はレノー様が強力なヤツを使っていたから大丈夫だと思うぞ。それに、レノー様の命を狙うなんてことをしでかして実家に帰った二人が無事に過ごせているとも思わないしな……」
「それって……」
「まぁ、俺達があの二人の事を気にしても仕方のない事だ。今はレノー様がさらに元気になるように世話をするのが優先だろ?」
「……そうですね!」
ゲスター様達の事も少し気にはなけれど、リアムさんに言われた通り今はレノー様に少しでも元気になってもらわないといけない。
ゲスター様やデュークさんが連れてきた使用人や医師が出て行った後、お屋敷に残ったのは僕とリアムさんを含めて数名のみだった。
少ない人数でお屋敷の仕事やレノー様のお世話で人手が足りないなかで、以前勤めてもらっていた使用人やレノー様の主治医に戻ってきてもらうように声をかけていく。
皆、嫌な顔もせずに戻ってくると言ってくれて僕は内心ホッとした。
少しずつ以前のように明るく賑やかになっていくお屋敷……。
そして、レノー様も体を起こしていられる時間も長くなり、ここ最近は部屋からも出てこれるようになった。といっても、一人では歩けないのでこのお屋敷で一番力持ちなリアムさんがレノー様を抱きかかえて移動をしている。
久しぶりにお気に入りのテラスへとやってきたレノー様は、ソファーへと降ろされると小さくため息を吐く。
「レノー様……ご気分が優れませんか?」
「いや、大丈夫だよ、ココ」
「本当ですか? ため息を吐かれていたので無理をさせてしまったのかと……」
「そんな事はないよ。またこうやってココとこの場所で過ごせて私はとても嬉しいんだ。ただ……リアムに抱きかかえられる事を除けばな」
レノー様は隣に立つリアムさんへと視線を向けると、リアムさんは眉を下げて少し悲しそうな表情を見せる。
「レノー様……。それじゃあ、俺の抱き方が悪いみたいじゃないですか」
「ふん。お前のような筋肉に覆われた暑苦しい男に抱かれて喜ぶ奴などおらんわ」
レノー様とリアムさんは今日も仲良く会話をしている。普段は寡黙なレノー様なのにリアムさんと一緒にいると口数も多い。きっとリアムさんの事を気に入ってくれているんだと思うと、僕も嬉しくなる。
「レノー様。お茶の準備ができましたよ。今日の紅茶はマーサさんと一緒に作ったんです」
「そうか。それは楽しみだな」
紅茶を口にしたレノー様は頬を緩ませ僕に微笑みかけてくれる。僕はレノー様のその笑顔が本当に大好きで……僕も満面の笑みを返した。
「レノー様は順調に回復しているようだな」
「はい! 主治医の先生も今のところ大きな問題はないって言ってました」
仕事が終わり僕とリアムさんは部屋へ着くなり二人でソファーにもたれかかる。
レノー様が目覚めてからは、以前のようにお屋敷に戻ることができた。あの小さな小屋でもよかったのだが、レノー様のお世話をするならすぐに行けるお屋敷の方がいいのでリアムさんと共に引越しをした。
お屋敷に戻る際にリアムさんも別に部屋を用意すると話をしたのだが、部屋が勿体無いし僕と一緒の部屋がいいと言われた。
二人で住むには少し狭い僕の部屋じゃ窮屈なんじゃないかと心配にもなったけれど……僕はリアムさんの申し出が少し嬉しかった。
リアムさんと一緒にいると楽しいし凄く安心する……。甘えてばかりじゃダメだよなぁ……と、思いはするもののリアムさんから笑顔を向けられると心の中がホワホワして……。
そんな事を考えながらリアムさんの方に視線を向ければ、目尻を下げていつもの優しい笑顔につられて僕も笑顔になる。
レノー様が元気になって、ダンさんやマーサさんと楽しく仕事をして、リアムさんと共に過ごす日々は本当に幸せで……僕はずっとこんな時間が続くように願うのだった。
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