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第11話(ジョン)
俺は3年前まで、ただのギャングの下っ端だった。
ガキの頃、親が死んでからはサウスブロンクスのティーンギャングに入り、盗みやセコイ薬の売人の使いっ走りをしながら生きていた。
そう、5年前だ。クリスマスの前だったから12月だった。
あの女、ナディール議員に拾われた。
ナディール議員には裏の顔がある。
権力や富だけじゃない。
何か大きな組織と繋がっている。
突然、俺の前に黒塗りの高級車で現れたかと思うとナディール議員のボディーガードからスタンガンを使って拉致された。
気がつくとサウスブロンクスの外れにある廃工場だった。
「気が付いた?ジョンソン•ミラー」
インド系の金持ちそうな女だ。
「誰だお前」
後ろ手に縛られたまま、起きあがろうとするとナディール議員のボディーガードから銃口を向けられた。
「今、ちょっとお仕事のスカウトしてるのよ。あなたサウスブロンクスでギャングの使いっ走りなんてもう飽きたでしょ?私のところで働かない?」
この状況はもう理解している。
この女の誘いを断れば、俺はこの場で始末される。
知っている。
俺はどこへ行っても搾取される側。
俺が死んでも誰も悲しまない。誰も気付かない。
「なんの仕事だ?いつから始める?」
「物分かりのイイ男ね。気に入ったわ!今日からよ」
ナディール議員は顎を掴むと唇にキスをして来た。
後々知ったが、この女は金髪の美しい男をコレクションしている。
その日居たボディーガード3人も、金髪でえらく顔がイイ男達だった。
俺がナディール議員からスカウトされたのも、使い捨ての道具には便利な天涯孤独な身の上とこの髪と顔らしい。
俺はギャングの使いっ走りから、武器商人へと転向し違法で危険な武器をナディール議員の為に集めた。
順調にいっていた武器取引だったが、急成長した俺の武器商人としての顔は、WIAに目を付けられヨハネスブルクでは邪魔が入った。
WIAのエージェント•ワイルド、こいつが俺のビジネスをめちゃくちゃにした男だ。
トビーを買う金も、この取引が無くなってナディール議員に借金する羽目になった。
今では借金を盾に、武器取引だけじゃなく汚れ仕事も回される。実験体の確保だ。
ジャニスのような、化学実験に必要な人間の調達。
以前は海外から人身売買組織を利用して調達していたようだか国境でのWIAの監視が厳しくなってからは国内でも実験体を集めているのだ。
「トビーには武器商人と言ったが、やってる事は人身売買と同じだな、、、」
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