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第12話(トビー)

よく考えてみたら花屋に入ったのは初めてかもしれない。 「花束?」 「あ、、、花が欲しいけど、よく分からなくて」 「ブーケ?花瓶のサイズは?それとも鉢植え?」 どうしよう、本当に何も決まっていない。 ジョンの家に花瓶なんてあるのか?? 「枯れない花がいい」 自分で言ってから、そんな花無いなと思った。 「う〜ん、、、そうだなぁ、、、ちょっと待ってて」 店員は何かを取りに奥へ引っ込むと、すぐに小さな鉢植えを持ってきた。 肉厚で光沢のある星型でピンク色の小さな花がたくさん咲いている。トビーは初めて見る花だ。 「これはホヤ・カルノーサっていうツルを伸ばして生長するツル性植物。花は6月〜9月に咲くけど、その後も観葉植物として鮮やかなグリーンのツルを伸ばすから一年中楽しめるよ。 これなら、枯れにくいと思う」 ツヤツヤとした花は瑞々しい。 「俺にも育てられるかな?」 「大丈夫。 出来れば直射日光は良くないけど、日当たりの良い場所に置いてあげて。一応、耐陰性があるから多少暗くても大丈夫だけど。 水をためこむことができる性質を持っているから、水やりは土が乾いてからが根腐れしない」 「、、、」 「ごめん、植物の事になると止まらなくて」 「いや、ありがとう。コレにする」 「俺はマイケル、君は?」 「トビー」 「トビー、コイツを宜しく。育て方とか分からない時はいつでも聞いて!」 「ありがとう」 ここには生き物の生命力に溢れている。 マイケルは、本当に花や植物が好きなんだろう。 好きなモノ、美しいモノに囲まれている。 きっと、家族や恋人、友人に愛されて育ったんだろう。 俺の知らない世界。 キラキラした普通の世界。 どうして俺はいつも陰にいるんだろう? どうして街行く皆んなは日の当たる場所に生まれたんだろう?

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