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episode.2

身体が変だ。 誰かに触られて、熱くて。 なんの夢だ、これ。 めちゃくちゃ18禁なんだけど…。 うっすら目を開けるが、まだ太陽は昇ってない。 寝る時は電気全消し派だから何も見えねえ。 ただ、1つだけわかるのは 何かが俺の上に誰か跨って、俺の腹やらケツやらを撫で回してるって事だ。 …? ?! 「誰だてめぇ!」 全力で暴れると、上に乗っていた不審者は俺の身体から飛び退いた。 「なんやねん、起きたんか。」 慌てて枕元のリモコンで部屋の照明をつける。 何か武器になる物…! 「この不審者!どっから入った!」 30cm定規とコンパスを手に戦闘態勢に入ったのも束の間 露わになった犯人の姿を見れば、思わず言葉を失う。 白銀の髪は腰まで伸びて、 切れ長の目、スッと伸びた鼻筋。 細身の身体に纏うのは漆黒のタキシード。 顔からスタイル、全てにおいて桁違いの美形だ。 「…マジで何?ホスト?つか女?ではねーか…。何してんだ!」 ずり落ちたズボンから覗くモノは若干自己主張が強い。 俺が寝てるうちに、何かされたに違いない。 俺の事をさもつまらなそうに眺めるそいつは、 呑気に欠伸をしながら頭を掻いていた。 「お、おい!人の話聞いて──」 「ぎゃーぎゃーうっさいねん。 静かにしとったら可愛いのに…台無しやわぁ。」 「煩くもなるだろ! 知らねー奴に夜這いされたんだぞ?!」 しかも可愛いってなんだ、台無しってなんだ。 DK相手に何を訳わかんねえ事言ってんだ! 自分だけ落ち着き払ってマジ意味わかんねえ。 強盗にしろ変質者にしろ、家の主が電気付けて騒いでりゃ焦るだろ普通! 「一体どこから入って…ッ!」 その時、思いきり扉をガツンと蹴られた。 鈍い金属音が家中に響き渡る。 ふと冷静になれば、今は真夜中。 ド平日の午前3時。 今回ばかりは隣のクレーマーに苛立ったとて 俺の負けは確定だ。 …くそ。 あんなヨボヨボ爺さんのどこにそんな力があるんだよ。 「…マジで誰だよお前。」 爺さんにビビッて小声になったんじゃねえから。 寝起きで騒いで少し疲れただけだから。 「誰言われても、俺も何て言ったらええか…。」 「は?名前言えっつってんだよ。」 「え~名前なんあらへんしなぁ…。」 「は?じゃ何て呼ばれてたんだよ。」 「呼び名は──杜若、やったなぁ…。」 「柿とバター?何だそれ不味そう。」 「柿とバターて何やねんつまらん。」 男はどうやら金を盗みに来た訳でも俺を殺しに来た訳でもなさそうで 本人すら今置かれている状況をよくわかってないようだった。 二重人格とか夢遊病とか、そんな所だろうか。 とりあえず俺は明日も学校があるから 柿とバターを窓から閉め出して、もう一度眠る事にする。 一応ベランダは広めだし、2階なら男が本気出せば降りられなくもない高さだし。 この夜の過ごし方は柿とバターに任せる事にした。

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