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episode.6

次の日も、また次の日も かきつばたは俺の家に居た。 別にそれはいいんだけど。 爪が邪魔で料理は出来ないらしいが それ以外の家事は全てこなしてくれる。 洗濯も、掃除も、洗い物も。 制服のアイロン掛けまで楽しそうにやってくれるから困る。 追い出す必要がなさ過ぎて。 思い返せば、こいつは突然家に侵入して来て 俺を襲いかけた不審者だというのに。 いや、でも日曜日だってのに朝から起きて 俺が起きるまでに飯以外は全て整ってるんだ。 なくすには惜しい存在でしかないだろ。 「柿とバター!何食いたい?」 「んー?スミレが死んでくれたら美味しくいただくで?」 「あ?柿にバター埋めて出すぞ。」 「あかん想像したくも無いわ。うっぷ。」 そしてこの数日で知った事だけど こいつの性癖は超特殊でねじ曲がってる。 「味噌汁は昨日作ったけど。」 「じゃあとはパンケーキだけやな。」 「お前味噌汁とパンケーキ食うのか?」 「うまいやんパンケーキ。」 「いや組合せの問題…。いいならいいけど。」 あと初日に食ったパンケーキがうまかったらしくて 何が食べたいかと聞けば大体パンケーキって言いやがる。 朝昼夜関係なく、おかずも組み合わせも関係なく。 簡単だから別にいいけど。 今までは自分で食って自分で片して終わりだったから こうして誰かの為に何かを作って それをうまいと言って貰えるのが実は俺も嬉しかったりする。 レンチンするだけの惣菜じゃなくて 一応は自分で混ぜて焼くんだし。 「うまぁ…。なぁ、スミレ。」 「ん、うまい。どうした?」 難しい顔をするかきつばたのフォークがテーブルに置かれる。 まだ3分の2はパンケーキが残っているのにだ。 もしかして分量間違ったかな? いや、でもいつも通りだし焦げてもないし…。 考えてもわからないもんは考えるのをやめる。 それが俺流だから、例に倣って開き直ってかきつばたを見るが、やっぱり深刻そうな顔で俺を見つめている。 「スミレ…今日どっか出かける用事とかあるん?」 「いきなり何だよ。別にないけど。」 「…あ、そお。もし行くならちゃんと言ってな。」 「…何か無い物とかあったっけ?洗剤とか? 終わりそうなら別に買ってくるけど。」 「そうやないねん…まぁ気にせんとって。」 かきつばたの言動に、何となく違和感を抱いた。 が、それも束の間。 最初から胡散臭すぎて違和感だらけのコイツに何か思ってみたところで無駄だ。 パンケーキは今日も美味い。 特に予定もなく、週末課題をダラダラ進めていた俺の元に一件のメッセージが届く。 『今から5人で勉強会やるけど来るー?』 連れからの遊びのお誘いだった。 遊びって言ったら語弊があるけど、どうせ誰もまともに課題進めようなんて思ってねーからな。 ちょうどいいや。暇だし。 適当に返信して、早速パジャマを脱ぎ捨てた。 ふと、かきつばたに言われた事を思い出す。 …別に遠くまで行くわけでもねえし わざわざ言う義理もねーだろ。 水の流れる音を聞くに、恐らくアイツは風呂掃除の最中だ。 足、濡れるし行くの面倒だな。 冷蔵庫に貼られたホワイトボードに “出かけてくる” それだけ残して外に出た。

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