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episode.9

「腫れとんなぁ…ココも擦りむいとる。」 「あんまり触んなっ…!」 ベッドに座らされたかと思えば、俺の脚の間に座ったかきつばたは捻った右足をぐっと持ち上げる。 電車移動だからって健康サンダルはやっぱりマズかったか。 バランスを崩した拍子にサンダルが脱げ、親指とくるぶしを擦りむいた。 大した怪我ではなかったけれど、ちょうどスニーカーに擦れる部位。 致命的な場所をやってしまったわけ。 そんな俺を他所に、かきつばたはというと さっきから患部に息を吹きかけたり、つんつん触れて遊んでいる。 ほんの数分前に「俺が手当したる」なんてドヤ顔で言い放って、テーブルに救急箱まで準備したというのに コレだ。 「やっぱ俺自分でするからいい!」 かきつばたの手から脚を抜こうと試みるが、細い腕のどこにそんな力が隠れているのかビクともしない。 「はぁ…ちょっと遊んだだけやんか。痛がり。」 「はぁ?お前マジ性格わりい!」 「わかったから暴れんといて。な?」 俺を見上げて薄ら笑いを浮かべるかきつばたは、俺の服を着ている。 身長は変わらないのに、細身の身体と白銀の髪のお陰でとても俺が着ている物と同じには見えないから 何ともこの世は不平等だと思う。 気に入っていたヨレヨレのTシャツから鎖骨が覗く。 骨皮の癖にこの色気は卑怯だ。 「なぁスミレ。傷に消毒液かけんのって、傷の治り遅くするの知っとる?」 「知らねえ…。 じゃ、じゃあ…どうしたらいいんだよ。」 「んー?こぉ。」 「っひぁ…!な、にして…っ。」 瞬間、右足指は熱い粘膜に覆われる。 何が起きているかもわからないまま身体を強張らせていると、ピリッと痛みを感じた。 「んー…鉄の味。まずぅ。」 血の滲んだ親指から、かきつばたの柔らかい唇が糸を引いて離れる。 ちゅぷ、と音を立てる口元は厭らしくて そこから見え隠れする赤い舌は挑発的な誘いを繰り返す。 何だよ…これっ。 「いっ…嫌なら辞めろっ。」 「不味いとは言うたけど、嫌とは誰も言ってへん。」 かきつばたは患部にたっぷり唾液を絡めると 次は人差し指、中指と順に口の中へ誘い込んだ。 「っかきつばたぁ…そんなとこ、怪我してな…っ!」 「ん、そぉ?でも…他にも怪我しとる所あるかも知らんやろ?これ脱ぎ。」 踵からつま先までをねっとりと舐め上げ、 ようやく足から離れると 今度は俺のズボンの裾をクンっと引っ張った。 肯定も否定もしなければ、静かに笑うかきつばたの手に従い腰を浮かせる始末。 熱い口内に犯されて もう頭はぐちゃぐちゃだ。

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