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episode.10
「どこも怪我なんかしてねーだろ!」
かきつばたにされるがまま腰紐を解かれ、下半身が露わになる。
いや、パンツは履いてっけど。
「んふふ。ホンマにええ身体しとるよなぁ。
この筋肉の付き方とか俺好み。」
体育と気が向いた日のチャリ通のための賜物を舌で撫でるかきつばたは
攻撃的な色気を纏って俺を見上げる。
その間も、もう片方の手は腫れた足首を優しく包み込むもんだから、またムカつくわけで。
「はぁ…。生きとるのが勿体ない。」
突然意味不明な事を言い出すが
死にかけた俺を助けたのは他の誰でもなくかきつばただ。
「死なせなかったのお前だろ…。」
「んー?あんなんの下に敷かれたら顔も穴もぺしゃんこやろ?綺麗に死ねや。」
「いや、死なねえ…よっ!」
かきつばたの力が抜けているのをいい事に、持ち上げられた脚ともう片方とを白い首に回した。
絶対調子に乗ってるかきつばたに
絞め技の一つでも食らわせてやろうと思っての行動だった。
なのに
「なにしてん?もしかしてスミレ…誘っとる?」
さっきより俺の中心に顔を近づけたかきつばたは、赤い舌を伸ばし、あろう事か下着の上から舐めたんだ。
誰にも触れさせた事の無い、そこを。
「っぁ…やめろ!柿とバターてめぇ!」
自分のものとは思えないような変な声が出て
勢い任せて乱暴にかきつばたの背中を蹴る。
それでも股を割って俺を見上げるこいつは
微塵も痛みなんて感じていないような不敵な笑みで
俺の内腿にスルリと手を滑らせて。
「なぁ、俺の名前わざとそう呼ぶのってなんなん?照れ隠し?なぁスミレ…?」
「う…ぅるせ…。」
際どい位置に触れられ、いくら相手が男でもこればかりは勝手に反応をしてしまう。
かきつばただって、変化に気付いている筈なのに、一向に触ろうとしなければ、バカにもしない。
いっそ笑われてしまえば、こっちだって死にそうな程恥ずかしい思いはしなくて済んだだろうに。
ほんと、ムカつく。
「あれ?スミレここも怪我しとるやん。」
「ぁ…?」
「ほら、こーこ。」
カリカリと長い爪で引っ掻かれてみれば、確かに少し痛い気がする。
内腿には少し赤くて楕円形の痕。
痛いというよりは、痒い。
「あー…それ治りかけ。この前階段の手すり滑ったとき摩擦で…。」
「ふ~ん?」
しつこく撫でられて、なんかモゾモゾする。
これもまた勃つ原因になっていくから都合が悪い。
「…っんだよ!」
「や~、ちょっと疑ったやん?」
「何を…?」
「だってほら。」
「んっ……?」
傷痕の少し上にピリッと走る刺激。
かきつばたの唇は、その場所を吸っていた。
「よぉ似とるやろ…?」
唇が離れると、そこには同じく楕円形で
元からあったそれよりも少し小さな鬱血痕。
こ、これって……。
「キスマーク、誰かに付けられたんかと思ったわ。」
「はっ?!て、てめぇ……っ!おい、こら柿とバター離せおいっ!!」
じたばたと身体を激しく動かしたとて
かきつばたの馬鹿力には敵わない。
わかっているのに暴れるのは──。
「ほら、やっぱり照れ隠し。」
もう、俺やだ…。
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