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episode.12
今俺が縋れるものは、かきつばたの長い髪だけだというのに
細く艶めくそれはサラサラと指の間を抜けてしまう。
股に顔を寄せ、厭らしい音を立てながら舌を這わせるかきつばたを
何も考えられない頭では拒否する事も出来ず、ただ見下ろしていた。
たまに俺から漏れる声は、自分のものだなんて思いたくないほど甘ったるくて気持ち悪くて、
自分自身の口元を抑える。
でも、俺のそんな小さな変化一つにも、
かきつばたはすぐに気が付いてしまうんだ。
「スミレ?何口押さえとん。
声我慢したら続きしたらんで?」
「~~っ!」
口を押えたままブンブン首を横に振った。
でも、自分だってわかる。
かきつばたに期待のまなざしを向けている事。
蜜を溢れさせた中心は反り上がり、
かきつばたを待っている事。
俺の身体はもう既に、
かきつばたに支配されている事。
「…ほーら、スミレ。」
その声が、緩く弧を描く唇が。
「…ええの?こんなに苦しそうやのに。」
さらりと身体を掠める長い髪が
そこから覗く色気に塗れた瞳が
「なめ、て……かきつばた…。」
俺の身体をいとも簡単に操ってしまうって事。
「…っふふ、ええ子やなスミレ。」
「んぁ…あ、ぁひ……っ。」
再開された愛撫に、俺の身体は素直すぎるほど律義に反応を示す。
お陰で弱い所なんて、多分かきつばたに丸わかりだ。
先端を押し潰すみたいに舌でグイグイ攻められて
さっきからひっきりなしに腰が浮いている。
急に強く吸われて身体が強張ったり、
かと思えば唾液を絡めるだけの緩い動きに物足りなさを感じたり。
恥ずかしさなんてどこかに消えて、代わりに気持ち良い刺激を探すことにしか頭が働かなくなってきた。
じゅぽ、じゅぷ
かきつばたの唾液と俺の先走りとが混じり、
卑猥な音が部屋に響く。
それでも、確かな刺激というのは一向に来なくて、
いつまで経ってもイく事は出来ない。
緩く、でも深く濃厚に
いつの間にか目や耳からも犯されて、
ずぶずぶに蕩けて堕ちて。
もう自分ではどうすればいいかもわからなくて。
「う…っ、も、やだぁ…っ。
イきた…かきつばた、グスッ…。」
「んっ、ぐ……っ?!」
ただただ、かきつばたに助けを求めた。
気持ちよくなりたくて
あとほんの少しだけ、
足りない何かをかきつばたに埋めてほしくて。
恥ずかしげもなく大股を広げて長髪を乱暴に引っ張る。
ぐしゃりと掴んだかきつばたの髪の毛を
勢いに任せて前後に動かした。
くぐもった苦しそうな声が聞こえても
それに構っていられるほどの余裕は残ってない。
一気に絶頂まで追い上げるようにかきつばたの頭を動かせば、急に強く吸い上げられて
勢いのまま、惜しげもなく盛大に白濁を放った。
髪を掴んだまま、その口の中へ。
「ゴボッ…ゲホッゲホッ……。」
白い拳が太腿を叩いた事で、
俺はようやく正気を取り戻した。
正直、何が起きていたのか自分でもよくわかっていない。
とりあえず、慌てて髪から手を離せば、
それの持ち主は苦しそうに顔を赤らめ、
激しく咳き込んだ。
「ゲホッ……はぁ、くるし…。」
「……あ、わり…。」
乱れた髪を指で梳いてやりながら、俺が謝る事なのかと疑問に思いながらも一応謝罪の言葉をかけてみる。
が、かきつばたは呼吸が落ち着くと
唇から溢れた白濁を舌で舐め取り、満足げに笑った。
「んっふふ。…俺、激しいのも好きやで?」
マジでこいつには一生謝ってやるもんか。
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