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episode.13

スミレに避けられとる。 いや、今回ばっかりは俺が悪い。 わかっとる。何度か謝ってみた。 けど無視や。 事の発端は先日スミレの息子を美味しくいただいた時の事。 「なーぁ、スミレもしかして童貞なん?」 「…は、はぁ?!ん、なわけねーだろザケんな柿っ。」 「せめてバター付けてや。」 「うっせえ!」 なんて見え見えバレバレのウソ付かれたら思わずからかってまうのが俺なわけで。 「ふ~ん?ほんならスミレちゃん俺に咥えられた時びっくびっく震えとったんは誰に対してもそうなんや。感じやすいんやな~?」 なーんてちょっと調子こいてスミレいじっとったら 見る見るうちに顔真っ赤っかにして震えだして なんやよー聞き取れんかったけど怒鳴り散らかしてふて寝しよった。 ええ時間やったしいつもなら隣のじーさんがドア一蹴りしに来るとこやけど その日に限ってそんな事もなく。 いっくら呼んでもゆすってもうんともすんとも言わんから仕方なく俺もその日は眠ったわけや。 で、問題は次の日やった。 朝食は今まで冗談抜きに毎日パンケーキ作ってくれとったのにご飯、みそ汁、卵焼き。 その日の晩も豚肉と野菜を炒めたの。 スミレが24時間パンケーキを焼かんかったなんておかしい。 いくらなんでもおかしかった。 そんな事って思われるかも知らんけど スミレはなんだかんだで俺の押しに弱い。 俺が食べたいものを作ってくれたし、 その殆どがパンケーキやったお陰で店でも開くんちゃうかレベルでホットケーキミックスが棚に入っとるのも知っとんねん。 なのに頑なに作らんっちゅうことは相当俺に怒ってるという事や。 そうなるともうたまらんくて時間を見つけてはスミレに謝り倒した。 おかえりの前にごめん、風呂はいりの前にごめん、いただきますの前、ごちそうさまの前、寝る前、寝た後、起きた時もおはようより先に出る言葉はごめんやった。 けれどスミレは俺の必死の謝罪に一切聞く耳を持ってくれず、それどころか目も合わせてくれやんかった。 ここまでくると流石の俺でもイラっと来る。 確かに俺が悪い。 悪いと思っとるしその原因もわかっとるから 毎日ちゃーんと謝った。 スミレの笑顔を見たくて、スミレと沢山話したくて。 別にスミレが嫌やっちゅうんならもうフェラとかしーひんし(生きとる間は、の話やけど) イジるのも…多少は気を付ける。 まあでもそこはしゃーないやん、俺って好きな子虐めるタイプやし?多分? どう許してもらおうか考えてばかりの毎日は何ともつまらんものやって、 俺も限界が見えてきた。 部屋の掃除を終えて洗濯物を畳んどると、 ガチャっと扉が開く音がする。 「スーミレ、おかえりぃ。」 俺は相変わらず不愛想に人の目も見ず、 ただいまの一言もなくすっすと横を通り抜けようとした学校帰りのスミレの腕を掴んだ。 「……っんだよ離せ!」 「嫌や。お前最近なんなん。」 「はぁ?」 「いつまで怒っとんねん。 俺が悪いのはわかっとるしこんな事言いたないけどさ。」 俺は振りほどこうと暴れるスミレの身体ごと包み込んで問うた。 まあそこらの人間よりは多少力はあるらしく、 俺よりガタイの良いスミレの事もしっかりホールドできてしまう自分が素晴らしい。 「……は?怒ってるとか…んだよ、それ……。」 だが、スミレの発した言葉は俺の思っとった返事とは少し違っとった。

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