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episode.21
いつも通り自転車で学校に向かう道のり。
今日はアパートが騒がしくて、
聞けば隣のじーさんが亡くなったらしい。
持病がどうのとか言ってた。
だからここ最近俺達が煩くても扉蹴破る勢いで叩かれることがなかったのかと納得する。
あんなに毎日うぜーと思ってたじーさんの存在も、
今後一切見ることも関わることもなくなるのかと思うと少しだけ寂しいと思わない事もない。
人の死って案外あっけないんだな。
ろくに会った事もない親戚が死んだとかはあったけど、
身近な人間が死ぬってのは今まで遭遇した事がなくて不思議な感覚だった。
かきつばたは、以前死人にしか興味がないなんてヤバいことを言っていたけれど
あれはどういう意味だったんだろう。
俺には想像もつかない。
殺し屋でもやってんのかよ。
にしては俺の事助けるばっかで全然殺してこようともしないし。
考えれば考えるほどわからない。
頭に残ってんのはかきつばたの真っ赤な顔
ほんっと困る。
学校すら行きたくなくて困る。
ずっとあいつと一緒にいてあいつのもっと色んな表情を見たいのに。
素直になれない性格が邪魔をして
遠回しな事しか言うことが出来ない。
例えば俺が、好きだどこにも行くなって言ったとして、
あいつは俺のもとにずっと居続けてくれるんだろうか。
それすらわからない。
17年間生きてきて、かきつばたとの出会いは普通じゃなくて、
男のあいつを好きになるのも、見ず知らずの他人を家に住まわせるのも、
こうして毎日のように世話をしてもらっているのも多分普通とはかけ離れていて。
普通に生きていてもまだ知らない事は沢山あるのに、
それがかきつばた相手だと何もかも普通じゃない気がして、誰かに聞くこともできない。
唯一聞ける相手といえば──
かきつばた本人。
恥ずかしい事この上ないわけだけど、
あんな顔するくらいには俺の事、嫌いじゃないっぽいし…?
帰ったら、色々聞いてみるのもありかもしれない。
かきつばたの気持ち、
かきつばたの生い立ちとか
…かきつばた自身の事。
いくら課題を完璧に終わらせようと
いざ授業となれば先生の話は子守唄だ。
念仏みたいな意味不明な事ずっと言ってても聞く気になれねえ。頭の中はかきつばたで埋まってる。
あいつがいなきゃ補習確定だ…なんて思いながら、板書だけはいつもより少しだけ丁寧にとっておいた。
かきつばたが俺に教えやすいように。
授業が終わり、みんなが週末の予定をこじつける時間。
そういえば、もう金曜日だった。
いつもなら誰より早く土日の約束を作るのが俺で、
それは家で一人が嫌だったから。
なのに今週はさっさと荷物を詰め込んで帰る準備万端だから面白い。
人って誰かの存在一つでこんなにすぐ変わる。
「スミ明日暇~?」
「あー…予定はねーけど…。」
「最近ノリわりぃよなお前~。猫でも飼ったか?」
週末一緒に遊び呆けていたメンツにもそんな事を言われる始末だ。
「んー…まぁそんなもん?」
猫っつーより引っ付いて離れないのは犬に近い気もするけど。
野生の男拾ったなんて口が裂けても言えねえし。
「予定ねぇなら少しだけカラオケ付き合ってくんね?
お願い30分だけでいいんだって~!」
「……まぁいいけどすぐ帰るからな?」
誘われたのは要するに気になってる子とその連れ呼んで
2対2でってなんとか誘い込んだらしいカラオケ。
どうせモブ役やんなら適当に理由つけて抜けれるってわけだ。
こいつならコミュ力高いから平気そうだしな。
「時間と場所また教えてくれ!じゃな!」
それだけ言って教室を出た。
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