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episode.23

「でさ、聞きたいんだけど。」 本日2枚目のパンケーキを食べながらかきつばたに問う。 当の本人は、やっぱりスミレの作るやつのがうまい~とか呑気な事言ってパンケーキを頬張ってる。 まぁ、かきつばたにまで改まった態度されたらそれこそ言いたい事も言えなくなる気がしたから丁度いい。 「お前って何なの?」 「んぐっ。」 「そんな口ン中いっぱいに入れるから詰まるんだよバカ。」 薄い胸をバシバシ叩くかきつばたに冷静に突っ込める辺り 俺相当こいつとの生活に慣れてるわ。 「はぁ~死ぬか思たわ…。何なのって何なん?」 「だってお前さ、急に俺の家乗り込んでくるわ住み着くわ死人が好きとか言うわで…わっかんねぇんだもん。そろそろ…教えろよお前の事。」 未だ苦しそうではあるものの 嫌そうな顔はされなくて安心した。 もし辛い過去があって 変な事聞くなって怒られたり…嫌われたりしたら堪らねえから。 「教えろねぇ。俺かてよぉわからんからなぁ…。」 かきつばたは、最後の一口を食べ終えて人差し指で唇を拭う。 その動作一つでも 目が離せないくらい格好良くてムカつく。 「ん~、せやなぁ。気が付いたらスミレん家におって、おるとこも無かったしスミレん家におらせてもろて、死人は好きってより周りが死人ばっかやったからかなあ…?」 一つ一つに答えてくれたかきつばたの回答。 正直1ミリもわからない。 こればっかりは俺がバカとか理解能力が無いとかそんなんじゃない気がする。 これを聞いて納得できる奴がいたら是非紹介してほしい。 「…もう一回聞いていい?」 「ん?」 「お前って何なの。」 かきつばたはおかしそうに笑った。 そらわからんよなぁごめんなぁって。 わかるように説明する気はねーのかよ。 「それよりスミレ、明日どっか出掛ける用事でもあるん?」 「は?話逸らすなよ用事はあるけど。」 「一つも逸らしてへんよ。どこまで行くん。」 俺には逸らしてるようにしか思えないんだけど。 そういえば前にも一度、かきつばたはこうして俺に用事があるのか聞いてきた事があった。 その時は無いって言って、でも確か急に誘われて 駅のホームで階段から落ちて…。 大事故に巻き込まれそうになった。 その時助けてくれたのは、 他の誰でもないかきつばたで。 “今ここで死ぬ奴はおらんから大丈夫や。” あの時は気にする余裕なんか無かったけれど、 今思えばおかしな話だ。 どうしてかきつばたにそんな事がわかるんだ。 「連れと…カラオケ。」 「俺もついてってええ?送り迎えだけでもさせてほしいんやけど。」 「…?別にいーけど。」 真剣な顔してそんな事言うかきつばたを拒否る事なんか出来ない。 もしこれが話を逸らしていないのだとしたら。 俺のふと思い出したあの日の言葉に、何か意味があるのだとしたら。 もしかして何か 良くない事が起きるんじゃないかって。 「っふふ、ありがとぉ。運が良ければ…いや悪ければ?そん時俺の事わかるんやないかな。」 口は笑ってるのに目が笑ってなくて、 上手く言えないけど、コイツらしくない覇気のない笑顔が気になった。 「さ。片すからちゃっちゃと食いぃやスミレ。」 「ん、おう…。」 ──そして明日、俺はかきつばたの全てを知る事になるんだ。

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