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episode.29

「でな?結論から言うと、俺人間やなかったねん。」 「はぁ?!」 かきつばたの突然の言葉に 俺は口元まで運んだパンケーキをフォークごと落とした。 これまでも変な事沢山言われてきたけど 今回のは群を抜いてわっかんねえ。 じゃあなんだ、お化けかお前は。 俺霊感とか全く無いんだけど。 「んっふふ、ほんま予想通りの反応でおもろいわぁ。」 いや笑ってる場合かよ。 わかるように説明しろっての! 大混乱の俺を他所にかきつばたは笑いながらパンケーキ食ってるし もう本気でわからん。 でも、いつもより笑顔が綺麗っていうか… 嬉しそうに笑って話すかきつばたを見ていると 不思議と嫌な気はしない。 好きって恐ろしいな。 「信じてくれると思って話すわけやないからええよ。 俺がスミレに聞いてほしいだけ。」 ──そう言って教えてくれたかきつばたの話は やっぱり俺には信じ難い事ばかりだった。 だけど出会いからして意味不明だったかきつばたなんだから これくらいが丁度いいのかもしれない、なんて思って。 ただ一つ、俺の頭でぐるぐるしてる事。 「俺を助けたからお前は…その、死神の仕い?じゃなくなったのか?」 俺のせいで、かきつばたはこれまで生きてきた世界を捨てて 俺と同じ人として生きる事になったんだろうか。 取り返しのつかないレベルで迷惑をかけてしまったのかもしれない。 数えきれないほど人の死を見てきたかきつばたにとって 自分がその立場になるのは多分、めちゃくちゃ怖い事だと思う。 少なくとも死後の世界なんて想像もつかない俺よりは、よっぽど。 「せやなぁ…でもそんな顔せんといて? 俺が俺の意思でした事やから。 今俺がここにおれるのは奇跡やと思っとるし、せやからスミレと一緒に残された時間を大切にしていきたいねん。」 かきつばたの柔らかい笑顔が俺を包んだ。 なんなんだよ、本当にこいつ 狡いんだよバカ。 もし、その死神のおっさんが怒ったらどうするつもりだったんだよ 俺の事守って、それで満足だったのかよ。 俺が適当に作ったパンケーキを こんな美味そうに食ってくれるのはお前だけなんだよ? 俺本当は嬉しかったんだ。 お前の為にもっと上手くなろうと思った。 他にもお前が喜んでくれる物作れるようになりたいと思った。 お前が居てくれたから、毎日楽しくて休みの日もつまらなくなくなってた。 居なくなるなって言ったのに 俺の為とか言って簡単に自分犠牲にすんなよな。 お前が俺の事想ってくれてるみたいに 俺だってお前の事大好きなのに…っ。 いつの間にか溢れた涙はなかなか止まらなくて 心配してくれるかきつばたの顔も歪んでよく見えなかった。 「かきつばたのばか…っ。」 命を助けて貰った癖に、礼どころか暴言吐いて泣きじゃくる俺をかきつばたが責める事はない。 ただ、静かに俺の涙が止まるまで寄り添い 何度も涙を拭いてくれた。 それはまるで 指の先まで俺に触れられる事を喜んでいるようだった。

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