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episode.31
俺からぶつけたキスは
かきつばたにされるのと違って歯が当たる。
そっと目をあけると、唇は俺とくっついたまま
どこか不敵な笑みを浮かべるかきつばたと目が合った。
ゾクリと背筋が痺れる。
瞳の奥は欲で燃えている。
押し込まれる指を必死に飲み込んでいくのがわかって、羞恥で身体が熱い。
「スミレ力抜いてやぁ…こんなんいつまで経っても入らんで?」
指1本ですら拒んでいるようじゃ
かきつばたも嫌になっちゃうかもしれない。
恐怖と違和感から萎え始めている俺と違って
太腿に押し付けられているそれは、もうずっと苦しそうなのに。
頭では思っていても、なかなか身体は応えてくれない。
初めてって、こんなに面倒なのか?
それとも俺だから?
俺がおかしいのかな。
かきつばたも別の相手してた方が、楽だし気持ち良いのかな。
「ンっ、かき…っ!も、いれろって!」
俺の痛みとかどうでもいいし
気持ち良いかどうかなんて、そもそも経験ない俺が知るわけない。
かきつばたに見放されるのはマジでやだ。
かきつばたが他の奴に目移りすんのだけは無理。
お前が気持ち良かったらそれでいい。
「あかんて。もし今日無理でも少しずつ慣らしてこ?
スミレの事大事にしたいんやから、乱暴なん出来んって。」
俺に向けるかきつばたの顔が優しすぎて、痛くて苦しい。
自分が第一で生きてきた俺の気遣いなんて下手クソで、自棄になるしか方法はないのに
かきつばたはそうじゃなくて。
自分がガキ過ぎて涙が出た。
急に泣き出したせいで焦るかきつばたに、理由も言えない。
「痛かった?スミレ…やめる?」
首を横に振り、かきつばたに額をくっつけた。
異物感とか苦しさとか、それに加えて泣いてんだから
もはや言葉なんか発せない。
それでも
違う。辞めないでって事だけは伝えたくて。
かきつばたがもっと我儘で
自分勝手ならよかったのに。
でもそうだったなら多分俺はかきつばたを好きになってないし、かきつばたも俺の事を好きになってない。
かきつばたがかきつばただったから、今の俺達がある。
かきつばた…気持ちよくしてあげたい
早く繋がりたいよ。
「平気…だから、続けろ。か…きつばか、」
あ、噛んだ。
「名前のバリエーション増えるんは嬉しいんやけどねぇ?」
ん…ばかは可哀想だよな。
ごめん柿。
「…指増やすけど痛かったらちゃんと言うんやで?」
少し顔の赤い姿が無性に嬉しくなって、
声を出さずに頷く。
──その動きが何十分も続いて
ようやく解れた頃、俺は既にクタクタになっていた。
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