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episode.35
最後は記憶が曖昧で
でもそうじゃなきゃ恥ずかしくてやばかったから
救われたってことにしておく。
かきつばたは、俺に覆い被さって荒い息を吐く。
俺のじゃない鼓動
俺のじゃない温もり
全然汗臭くなんてない、花の匂い。
「おい、ばかきつばか。…重い。」
照れ隠しは許してほしい。
どうせもう、俺がかきつばたを名前で呼ばない時がどんな時かお前わかってんだろ。
俺の中に入ったままのかきつばたのがやっと少し落ち着いて
ケツの違和感も緩和される。
と同時に俺自身も落ち着きを取り戻して
残ったのはやり場のない羞恥…だけだ。
「待って俺めちゃくちゃ疲れたんやけど。
重力に耐えれん。」
そういえば体格のわりに馬鹿力だった事や
あり得ないくらい身軽だった事も
人とかきつばたで結構違ったんだろうか。
かきつばたが、重たそうに腰を浮かせて俺から抜き取ろうとして
未だに慣れない感覚に身体は敏感に反応を示す。
「ぁ、ちょ…っ抜いちゃやだ!」
「え?まだ足りやんの?スミレさんそんなえっちな子やったっけ?」
「あぁ?!」
ちっげぇよ。
察せよお前わかんだろバカきつバカ。
「んッ…待ってスミレ、抜かんのはええけど締めんといて?」
「え?」
今聞いちゃった、俺
かきつばたが喘いだの。
その気持ちはわかるぞ、俺だって男だし。
イった後だもんな~そうだよな~?
締めるっていうのはどうやるかよくわからないけど
さっき声を張り上げた時みたいに少し身体に力を込めてみた。
「っア…かんて!こら!」
やべ、ちょー可愛い。
「っへへ、気持ち良いの?」
「…何やねん生意気なガキやな。」
やっぱ前言撤回。
こいつは可愛くなんかない。
バカの柿のバターのマーガリンの変態だ。
「おい、かきつばた。」
だけどそんなお前で、こんなに心が温かくなる俺がいる。
それがかきつばたも同じであってほしいし
そうじゃなきゃ許さない。
「なぁに?スミレ。」
いつもの間抜けな関西弁で
聞かせろよ。
「俺の事…好きって言え。」
ずっと一緒に居たいから
そんな俺の自信に繋がる簡単な言葉を
たった一つだけ、その言葉を。
「そんな言わせるような形でスミレはええの?
俺の事どう思っとるって聞いてみ?」
かきつばたは嬉しそうに俺の頬を取った。
そんな顔されると答えわかっちゃうんだけど。
サプライズ下手そうだよな、こいつ。
「どう、思ってんだよ…。」
答えなんかわかり切ってんのにこの緊張感。
かきつばたの言葉で、俺だけに向けた“好き”を聞きたい。
「っふふ、せやなあ。
照れ屋で素直やなくて、一生懸命で意地っ張りで、頑張り屋さんで…
どこまでも俺を夢中にさせてくれるスミレが大好き。」
んな格好良い顔して綺麗すぎる笑顔でさ
クサい事言うなよな。
似合いすぎだ、ばか。
自分から言わせたようなものなのに
急に恥ずかしさが込み上げて
またきゅって力を入れてやる。
流石にもう喘がなかったけど
眉毛下げて笑ったかきつばたに頭を叩かれた。
「俺も…。」
言わなきゃ、伝えなきゃ
ちゃんとかきつばたの目を見て。
顔が熱い
顔どころじゃない、全部熱い。
けどこのタイミングを逃したら
次にいつ言えるチャンスが来るかわからない。
俺を擽る長い髪に指を絡めて
なかなか言い慣れない大好きな人の名前を噛まないように深呼吸して
口を開いた。
「俺も、かきつばたが大好き。」
俺の頭ん中、こんないっぱいにして
マジ責任取れよな。
ばーか。
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