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死神様×閻魔様(番外編)
*かきつばたが人間としての寿命が残りわずかになった頃のお話
「いやぁ、ねえ…我んとこの紅薔薇可愛いじゃろ?」
「健気なボンだなぁ。」
定期的に地獄に酒を持って遊びに来る死神さん。
今日は“魔王”という、その名前に似合わずフルーティーな香りを醸し出す酒を持ってきた。
「かきちゃんの近所の死者導かせてんのわざとっしょ?」
「当たり前じゃろ、可愛くて仕方がない。」
閻魔のオレと死神のおじぃが仲良いなんて知ったら人間や仕いが怖がるだろうから極秘の集まりではあるのだが、年に一度かそれ以上の間があいて突然やってくるおじぃは冗談抜きで紅薔薇っつーお堅い仕いの話しかしない。
こりゃよっぽどのお気に入りだな。
「あの子かきちゃんが死んだらどうすんのかね?」
「さぁな?我は紅薔薇の好きなようにさせるつもりじゃが。」
…ほんと紅薔薇に甘いおじぃだ。
「かきつばたを導く仕事を受け持ちたいと言っとった。」
「やらしてやんの?」
「当たり前じゃろ、上でもココでも好きな所に連れてってやりゃあええ。」
「………はぁ。」
オレ的にはあんなお堅いのよりかきちゃんの方が面白くて可憐でいいと思うんだけどね。
例えココに来ても苦しめたりするつもりはなくて、一緒に酒の相手でもしてもらいたかったけどーー。
…まあ、あの子に委ねるってんなら上行くの確でしょ。
「我ね、歯向かわれるの嫌い。」
「あぁ、そう。」
「じゃからね、我紅薔薇大好き。」
「あーはいはい。」
おじぃの酔いも回ってガキみたいな事ぬかし始めた所で、今日の宴会は終わりだ。
次はいつになるだろうか。
空になった魔王の瓶はこちらで回収しておくことにする。
こんな平和な会話をしちゃいるが本来、ここは地獄だ。
何か酷い行いをしてここへやってきた者に、ぶつけようか目にぐりぐりと押し込んでやろうか…と使い道を考えた。
「また幾つか我のオススメ見繕ってくるからな〜!」
そう言っておじぃは赤い顔して上機嫌で去っていく。
そしてその間も、かきちゃんの時間は止まらない。
それから一年も経たずにやってきたおじぃは、ボロボロ涙を流して
「我、紅薔薇人間にしちゃった…。」
とか言うから軽く2日は笑い転げていた。
おわり
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