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一方で身体は明らかに変化した。
來に触れられた瞬間全身がわななき、奥底で渦巻いていたあのどろどろが、表層にぶわっと溢れ出る感覚がした。実際の見た目に起こる変化ではない。肉体が、精神が、体感したことのない状態に陥っている。
「なに、これ……」
聖利の言葉をそれ以上塞ぐように、來が口づけてくる。噛みつくように激しく唇を重ねられ、聖利は驚いた。
キスをしている。來とキスを。
これは夢だろうか。恋しすぎて都合のいい夢を見ているのだろうか。ああ、でも來の香りだ。
戸惑いなど消え失せ、身体は歓喜を持ってキスを受け入れた。唇は自然と薄く開き、侵入してきた來の舌にためらいもなく自らの舌を絡めている。
「ん、んんっ、ふ…」
ちゅぷ、ちゅぷ、と水音が響く。気づけば來にすがりつくように身体を押し付けている。特に下腹部を擦りつけていて、自分の無意識にぎょっとした。駄目だ。何をしているんだ。慌てて身体を離そうとすると、來に強く腰を抱かれた。
「逃げんな。口、開けろ」
指示されるままに唇を開け、來の舌を受け入れた。甘い。とろけてしまいそうだ。そこでさらに気づいた。
(來、勃ってる……?)
骨盤あたりにぐりっと当たる感触。來の雄の部分が反応している。そして、聖利は自分自身の中心もまた硬く張り詰めているのを感じていた。痛いほどに猛り、持ち上がったそれを來の腿に擦り付けてしまう。
「……だ、駄目だ、來」
キスを中断し、必死に聖利は叫んだ。身体は依然熱く、言うことをまったく聞いてくれない。
「何が嫌だよ。こんなとろけた顔で、甘ったるい匂いさせて」
甘ったるい匂い? 聖利にはわからない。
「したいんだろ? カチカチに勃ってるじゃん」
來が聖利の身体を横抱きに抱き上げた。十センチしか違わないのに、悔しいがパワーは全然違うようだ。
そのまま、來は自分のベッドに聖利を運び、乱暴に降ろした。逃げる隙もなく、シーツに縫い留めるように両手を組み合わせてくる。
「なあ、聖利……」
「來……」
「その顔、煽ってんだろ? 俺を」
來が低くささやいた。來の瞳は熱に浮かされたように揺らめいている。
「こんなことになる前からさ、おまえの態度は、ずっと俺を誘ってた」
「誘ってなんか……! 僕は……!」
「だって聖利、俺のこと好きだもんな」
聖利はぐっと詰まった。ああ、惹かれている。否定のしようもないほど、否定したくないほど、來が好きだ。今この不可解な状況を、どうしようもなく嬉しく思ってしまっている自分がいる。
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