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「しようぜ。聖利もしたいんだろ」
「したくない、駄目だ!」
「後ろ、触ってみればわかる。俺を受け入れたくて、きっとぐずぐずにとろけてんぞ。ほら、脚開け」
「やめろ、來!」
「たくさん、おまえが飽きるまでしてやるから」
言葉を封じるように、甘やかすキスで唇を塞がれる。
最後までしてしまいたい。どうしてかわからないけれど、來は自分に欲情している。夢中と言っていいほど、欲しがっている。こんな夢のような機会は二度と訪れない。
それならこのまま繋がってしまいたい。彼のペニスを受け入れ、揺さぶられ、恋人同士みたいに抱き合いたい。
幻でもなんでも構わない。ひととき、來のものになれるなら……。
脳の奥から溢れる強い衝動に、聖利は恐怖を覚えた。
駄目だ。何を考えている。
抱き合ってしまえば、來は絶対に後悔する。その來を見て、自分もまた後悔するに違いない。
残された理性を総動員して、聖利は叫んだ。
「來!」
聖利は顔をそむけキスから逃れると、來の身体を押し返しす。
「僕は嫌だ! したくない!」
身体を繋げば、來との三年間築いてきたライバル関係は変質してしまうだろう。
抱かれたい。來のものになりたい。だけど來が好きだからなし崩しで関係を持ってはいけない。
彼はこちらのことなど好きでもなんでもない。これは何かの間違いなのだ。
すると、聖利の肩口に顔を埋めていた來が、勢いよく身体を起こした。
その顔は鬼気迫ると言っていいほど厳しい。数瞬マウントを取った状態で息を吸い、それから來は突如自身の顔を殴りつけた。
「ら、來!?」
何が起こったのかわからず、驚愕する聖利。
來は無言で聖利の上から退いた。ペニスは硬く張り詰めたままで、鼻孔から血がつうっと滴るのが見える。しかし顔を雑に拭うと、それ以上構うことなく制服に着替え、聖利の身体をシーツでぐるんとくるんだ。横抱きにして立ち上がる。
「來、何を!」
「じっとしてろ。おまえはおかしい。保健室に運ぶ」
「自分で……」
「歩けねえだろ。身体フラフラで、下着ぐちゃぐちゃで」
カッと頬が熱くなった。羞恥といまだ身体を包む熱で何も言い返せない。
早朝の寮の廊下を誰にも見咎められないうちに進み、來は校舎の保健室に聖利を運んだ。保険医が常駐しているのだ。
男性保険医は聖利の様子を見て、すぐに救急車を要請した。聖利は薄れゆく意識の中で、付き添うと言い張る來の姿を見た。
(來、授業に出なきゃ駄目だ)
そんなことを考えたのが最後だった。
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