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「アルファがオメガを求めるのは本能だからな。本能に、上手に恋心を隠して誘えるんだよ」 「だけど、僕はそうした気持ちに応える気はないんだ」  オメガになった途端に、誘いやすい相手として求婚されるのは、聖利の気持ちとしては複雑だ。  なにより、日々あちこちからそういった視線を浴びるのが嫌だ。性の対象とされているのかと思うとなんとも居心地が悪い。今までだって、同性に告白されることは多かったけれど、これはまた違う気がする。 「じゃあ聖利、俺と番になるか? 誰も文句言えないだろ」  不意に言われ、どくんと心臓が大きな音をたてた。  番? 來が?   驚いて顔をあげた聖利に、ベッドから立ちあがった來が歩み寄ってくる。聖利に渡した缶コーヒーを開け、ひと口飲んだ。 「飲めよ。ブラック嫌いか?」 「そ、うじゃなくて……」  缶を聖利の手に戻して、來は目を細めた。 「俺と番になっておけばラクじゃん。まず、俺に敵うヤツなんていねえもんな。頭、顔、身体能力、おまけに親の金」  茶化すようにうそぶいて笑う。 「馬鹿を言うな。フリだって、そんなこと……!」 「おまえが望むなら、首噛んで本物の番になってやってもいいけど?」 「ぼ、僕はまだ未成熟なオメガだから、番を作れるのは数年先だ」 「ふぅん、でもそんなの周りは知らねーだろ? 俺が首筋に噛み痕を付けてやればみんな信じる」  噛み痕……本気で言っているのだろうか。來がどこまで考えているのかわからない。顔はいつものからかうような笑顔だし、聖利の狼狽を可笑しそうに観察している。  赤面なんかしちゃいけない、と必死に落ち着こうとするのに、心臓の鼓動に押し出されるように頬に熱がのぼる。 「楠見野聖利の番が海瀬來だとしたら、みんな納得する。奪うなんて考える馬鹿はいない」  目を細めて見下ろしてくる來。この一瞬だけ切り取れば、その目は優しく慈愛に満ちていた。まるで愛しい恋人を見るような目だ。 「おまえに釣り合う能力のある男なんて俺くらいだ。似合いの番の完成」

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