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***  その晩、夕食と課題を済ませた聖利はひとりシャワーを浴びにいくため、自室を出た。 來はやはり帰ってこない。どこにいるのかもわからないし、連絡もできない。  スマホの番号は先日交換したけれど、連絡したことはまだ一度もない。気軽に連絡できない関係で、何が友達だろう。そもそも、來は関わるなと言った。聖利にできることはない。  聖利は共同のシャワールームには行かずに、二階の三年居室の方向へ向かう。  オメガに転化した際に、高坂から空き部屋のシャワーを使っていいと許可されていた。抑制剤がよく効いているとしても、体調によっては万が一ということもある。そういったときに、共同のシャワールームで間違いが起こるとまずいという配慮からだった。  三年は個室が与えられ、全室に簡易なシャワーがついている。空き部屋は常日頃施錠されていないが、誰も使う用事も入る用事もないので、聖利がひとりシャワーを使っていて不都合が起こったことはいまだない。  シャワーを固定し、熱い湯を頭から浴びた。心地よくて目をつむる。  考えてしまうのは來のことだった。  このまま部屋に居着かないのはよくない。ずっと外泊状態では、いくら來の家が学園の支援者だといっても不都合が起こるだろう。自分が部屋替えを申し入れれば、來は戻ってくるだろうか。  來と同室でいるのは緊張感ばかりで嫌だった。だけど、朝晩好きな男の顔を見られる日々は幸せだった。今は、簡単に手放せるものではなくなっている。それがどんどん恋を育てていく一因になったとしてもだ。  來に謝ろうか。しかし、生徒会に入ることは聖利自身で決めたことだ。來の機嫌とりに辞めるなんて絶対に嫌だった。 「來……」  つつ、と指先で身体をなぞる。こうして、ひとりでいるとつい思いだしてしまう。  ファーストヒートのとき、來は聖利にキスをした。舌を身体に這わせ、胸の突起を弄んだ。それだけで、聖利は呆気なく達してしまった。  指で自身の胸に触れる。小さな実をかすめるように触れ、指先でこね、潰す。それだけでため息が出る。あの日のことを身体は覚えている。  來に触れてもらった。本当はあのまま荒々しく奪われたかった。深く穿たれ、揺さぶられ、彼の下で何度も絶頂を迎えたかった。  そんなことをしてしまえば、彼も自分も今の状態ではいられなかっただろう。  來の人生に傷をつけずに済んでよかった。來があのとき正気に戻ってくれてよかった。  來が好きだ。だから彼の生きる道を邪魔したくない。  それなのに、脳はしつこくしつこくリプレイする。甘く組み敷かれたあの瞬間を。

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