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「あっ! ああっ!」
激しくのけぞり叫ぶ聖利を逃すまいと來が抱きとめた。さらに大きく骨ばった手でペニスを包み込み、上下に扱きだす。
「ああっ、いやっ、いやだ! 來っ!」
「なあ、誰のこと考えて擦んの? あの顔の綺麗な生徒会長か? それとも男っぽい高坂寮長か? おまえの好みはどのアルファだよ。誰に抱かれることを想像してんの?」
「やめ、……何も、そんなことっ!」
「教えろよ、聖利。なあ、ほら、そいつの名前呼んでいいから。目をつぶって、そいつにされてると思えよ」
意地悪な言葉に涙が滲んできた。追い詰められ、勝手にどんどん反応していく身体。何も知らないのに、聖利を貶める來。ひどい。こんな男のことをどうして好きなんだろう。
「聖利、言えよ。誰のこと考えてた?」
「らい……」
意趣返しだ。こうなったらとことんやってやろう。涙の滲む目で聖利は來を見つめる。
「來のこと、考えて……してた」
來が動きを止める。切れ長の美しい瞳が見開かれ、口元も呆けたように薄く開いた。
次の瞬間、來の顔がぶわっと赤くなった。見たことのない表情は、あきらかな狼狽。
聖利は潤んだ目を細め、いやいやするように首を振って訴える。
「意地悪だ、來……。僕は、おまえにしか触れられたことがない……。それを思いだしてしまうのはおかしいか?」
「いや……」
焦ればいい。気まずくなればいい。そして、この一撃で正気に戻ってほしい。
本格的なヒートではないのだ。來はきっと正常な判断ができる。好きでもないオメガと、こんなことをするのは違うと気づける。
來の胸をどんと押す。涙がこぼれた。
「僕だってオメガである前に普通の男だ。処理くらいするし、おまえに迷惑はかけてない。わかったら行ってくれ」
しかし、來は動かない。シャワールームから押し出そうとさらに強く胸を押すと、來が聖利の腕を掴んだ。開いた片手でシャワーの湯を止め、聖利をバスルームの壁に追い詰める。そして、再び抱きすくめた。
「來!」
「……処理、手伝ってやる」
耳元に響く低くかすれた声。來がどんな顔をしているのかわからない。
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