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すべてが済むと、來はシャワーの湯であらためて聖利の身体を洗ってくれた。來自身もびしょぬれだが厭わずに、新しいバスタオルで聖利の身体を包む。
「來……おまえ、イッてない」
「いいんだよ。聖利の処理を手伝っただけだから」
聖利は下唇を噛みしめた。來の身体は確かに反応していた。しかし、來は性欲を抑え込んだ。ヒート期でないとはいえ、匂いを感じるオメガ相手に。
「僕じゃ、その気にならないか」
「馬鹿言うな。ヒートだったら間違いなく犯してた。……そういう事故を防がなきゃなんねぇだろ」
惨めな気持ちで聖利は首を振った。來は付き合ってくれただけなのだ。
やはりこの気持ちは來には届かないだろう。いいのだ。元より届けるつもりもない恋なのだから。
「聖利」
來が聖利の顎を持ち上げる。そのまま唇を寄せられ、慌てて逸らした。キスを拒否してしまった。
「優しくしなくていい」
聖利は首を振り、目を伏せた。線引きするなら、今のタイミングをおいてほかにはないだろう。
「來は急にオメガになった僕の傍に居合わせたから、責任と優しさで構ってくれているんだろう? 心配や気遣いは無用だ。こんなことももうしなくていい」
「聖利、俺は」
「幸いおまえ以外の生徒にはオメガの匂いを指摘されてはいない。抑制剤は効いているんだろう。もちろん、抑制剤を見直せるか医師に相談するが、当面來の前に姿を現さないようにする」
「同室で同じクラスで無理だろ」
意を決して聖利は顔をあげた。濡れた來の髪を掻き上げてやりたい。頬に触れたい。そんな欲求を押し込み、伝える。
「部屋替えを寮長に相談するよ。以前から提案はされていたんだ。他のアルファやベータはともかく、おまえみたいに鼻のいいアルファと同室じゃお互いのためにならない」
次に同じことが起これば自分はまた來を求めてしまうだろう。來もまたアルファの本能に引きずられ、聖利を組み伏せてしまうのだ。
今度こそ、最後までしてしまうかもしれない。
それが嬉しいのは來に恋している自分だけ。彼はきっと後悔するだろう。
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