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 來が嘆息し、じっと聖利の目を見つめてくる。それは今まで見た來の表情の中では、一番真剣なものだった。 「聖利、俺と番になることを考えろ」 「何を……」  聖利は動揺を押し隠し、嘲笑する。 「振りだって嫌だと言ったはずだ」 「大事にする。……おまえのことを他のアルファから守れる。俺なら」  來の気持ちは恋じゃない。友情の延長だ。そう思うと胸がチクチク痛い。離れると決めておいて、言葉に揺れるな。自分を必死に鼓舞する。 「僕はおまえと対等の存在でいたいんだ」  ライバルだと認めている來に庇護されるなんて聖利には我慢ならない。  そして、來の一生をこの若さで決めさせてしまうことは、聖利にはできない。だからこそ、聖利は精一杯虚勢を張り嘘をついた。 「誤解するな。僕はおまえを性欲のはけ口として使っただけだ。おまえに気持ちなんかない。好きでもない男と番になんかなれない」  來がぎゅっと眉をひき絞った。苦しげな表情は一瞬で、すぐに顔をそむけてしまう。 「そうか。よくわかった」  立ち上がった來は、濡れた身体のままシャワールームを出る。 「関わらないと言ったばかりで悪かったな。今度こそ、お節介は終わりにする」 一度も振り返らずに、來は部屋を出ていった。  残された聖利は、後から後から溢れる涙をぬぐいもせず、床に座り込む。  來と離れるのだ。これが一番いいきっかけになる。  自分でくだした決断なのに、聖利の涙はいつまでも止まらなかった。   

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