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添川が醜い愉悦の顔で見下ろしてくる。
「これから、貴様を抱いてやろう。俺のメスになれることを光栄に思え。番にもしてやる。おまえが嫌がろうが、オメガなんて首を噛んでしまえば俺のものだからな」
この男は知らないのだ。聖利がまだ番を作れるオメガにはなっていないと。
ここでこの連中に輪姦されたとして、聖利は誰のものにもならない。かといって、犯罪者たちに身体を自由にされるのは御免だ。
おそらく、何かひとつ騒ぎを起こせば助けはくる。この場所なら、誰かが見つけてくれる。何をしたらいい? 何を……。
冷静に考えているつもりで、頭に浮かぶのは來の顔だった。
來に会いたい。こんなやつらに自由にされる前に、來のものになりたかった。
諦めるなと思いながら、涙が滲んでくる。
もっと早く好きだと言えばよかった。素直に伝えればよかった。臆病な自分が馬鹿だったのだ。
來に会いたい。來に。
「そうやっておとなしく泣いていろ。オメガなんて突っ込めばすぐに……」
添川の言葉が途切れたのと、その身体が思い切り真横に吹っ飛ぶのは同時だった。
何が起こった?
引き倒されたままの聖利の目に、月光を背負った來の姿が見えた。
息を切らし、冷たいまでの美貌は蒼白で凄みすら感じる。添川を殴り飛ばした拳がぶるぶる震えていた。
「てめぇら、聖利に何をした」
底冷えのする声が響く。整った顔が怒りに染まるのが見えた。男たちが聖利から手を離し、後退る。本能的に來の持つ迫力に気圧されているのがわかる。
「聖利に触ってタダで済むとは思ってねえだろうな。覚悟しろよ」
止める間はなかった。暴漢たちは数秒のうちに、來に殴り倒され、蹴り揚げられ地面に沈んだ。
まるで野生の獣のようにしなやかで力強い立ち回りだった。頬に飛んだ返り血すら美しい。
來は首謀者を逃がす気はないようだ。ずるずると這って逃げようとする添川を捕まえ、前髪を掴み上げた。
「おいおい、好き勝手やっておいて逃げるのはねぇわ」
目は血走り、激しい怒りで声は嘲笑しているように聞こえる。
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