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警察が到着し、学園の職員も集り、事件は大きなものとなった。
当事者のひとりである聖利は検査のために病院に向かわされた。何もされていないと報告したが、転化オメガの症例自体が珍しいので、体調等に異変が出ないか調べたほうがいいというのが学園側の意見だ。來は絶対について行くと言って聞かず、同行となった。
かかりつけとなっているバース性科のある病院に入り、検査をひと通り終えると明け方である。
ふたりはあてがわれた個室でようやくひと息ついた。聖利は経過観察で明日まで入院となり、その間に警察の事情聴取も入るそうだ。
「よくわかったな。五階の部屋にいたんだろ?」
ベッドのリクライニングを起こして、聖利は來に語りかける。押さえつけられできた擦過傷には絆創膏が貼られているが、それ以外は無傷と言ってもいいくらいだ。
「おまえの匂いは、どこにいてもわかる」
ベッド横のパイプ椅子に腰かけ、來はぼそっと答えた。
「それに、ちょうど部屋に戻った時間だったから」
「高坂寮長に聞いたぞ。おまえ、寮役員に入るんだろう? 寮長付きで。これからは学校脱出なんて周りに示しがつかなくなるからな」
「……だから、その件も含めて話してきたんだよ」
意味がわからず、聖利は首をかしげる。すると、來は視線をそらして嘆息した。観念したように言う。
「山を降りたとこにカフェバーがあんだよ。そこでバイトしてた」
「はぁ? 來がバイト!?」
原則、修豊真船はバイト禁止だ。というより、全寮制なのでバイトできる環境にない。そして、大企業の御曹司がなぜバイトなどしていたというのだろうか。
驚く聖利に、來が不機嫌そうに答える。
「中等部のときは、面白くねえから学校出てうろついてたんだけど、そのカフェバーのオーナーに拾ってもらって。金貯めたいって思うようになったから、中三からこっそり働かせてもらってた」
バイトとは予想外である。なるほど、平日の夜はもちろん、土日も部屋にいないわけだ。
「金貯めるっていう目標は急がなくてもよくなったし、高坂寮長たちがうるせーから寮役員もやってやる。カフェバーのオーナーにバイトを土日だけにしたいって言ってきたんだよ。まあ、元からガキ扱いされててたいした戦力とも思われてねぇから、ふたつ返事でOKされたけど」
「ねえ、來。なんでお金を貯めようと思ったんだ? おまえの家柄なら不自由しないだろ?」
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