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番外編-3

 帰寮し、早速來に相談した。夏休みの最初の一週間、ふたりで過ごすことはできないか。ヒート症状の確認と安定のために。 『ああ、じゃあそうしよう』  來はふたつ返事だった。なんの躊躇もない言葉に、聖利の方があせる。 『いいのか? 貴重な夏休みを、一週間も僕のために』 『いいに決まってるだろ。聖利とふたりきりで過ごせるんだから』  來は真顔だ。いや、どこか張りきっているようにすら見える。  思いの外簡単に決まってしまったが、本当にいいのだろうか。来は実家になんと説明するのだろう。 『ちょうどいいところがあるから』 『ちょうどって』 『ふたりきりで自由に一週間過ごせるところ』  來がにいっと口の端を持ち上げ、笑った。  両親には、あくまで梶医師の勧めであることを強調した。個人的な希望ではない。聖利が今後ヒートと付き合っていくため、また医学の進歩のためである。  しかし、どれほど言葉を尽くしても、若い恋人同士を親は簡単に許してくれない。  この告白はヒート期、未来の番候補と心身ともに結ばれて過ごすという意味である。さすがにオメガになったばかりの息子から聞くには、生々しい報告だったに違いない。  母は恋愛に寛容なせいか『好きな人と一緒に心配な時期を過ごせるなら安心じゃない』と言ってくれたが、父はどうも納得してくれない様子。 『まだ、早いんじゃないか?』  そう言った父は、完全に娘を嫁に出したくないパパ状態だった。まさか自分のオメガ化で、恋愛事情を赤裸々に話すはめになるとは思わなかったし、高1にして父にこんな態度を取られるとは思わなかった。    來は自分が説得すると言って聞かず、結局画面通話で來と聖利の両親が対話を果たすことで、今回の一週間は許可が下りた。  來が普段の百倍くらい真面目に両親と相対していたことには驚いたが、思えば彼は海瀬グループの跡取り。実家にあれば、御曹司として公的な場に出ることもあるのだろう。  その真面目な好青年っぷりに、母はすっかり陥落。  父も『ひとまず許すが、婚約などの話はまた改めて』と許可をくれるに至った。  なお、聖利の両親は來の出自を知らない。海瀬グループの跡取り息子だなどと知ったときの反応がどうなるか……というのはまだ先でいいと思う聖利である。  ふたりは一学期の終業式を終え、荷造りをして寮を出た。実家に帰る生徒たちに混じり、電車に乗るがふたりの行き先は実家ではない。都心のど真ん中にある來の親戚のマンションである。  こうしてふたりの一週間の同棲生活は幕を開けたのだった。

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