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第30話 ライバルの出現?

 黒を見つけたのは探し回ってから10分ほど経った頃。夜の庭で花壇に咲く花を見つめていた。切なさと悲しみを含んだ何とも言えない雰囲気が漂っている。 「黒‥」 「この花はスイートピーだ。優しい思い出や至福の喜びという意味がある。|欣怡《シンイー》の好きな花だった」 「そうなんだ‥」 「一方で別離や別れという意味を持つ…」 黒はいつもより饒舌だ。繊細な花を撫でている姿は憂いが含まれているように感じた。切なそうな苦しんでるようなそんな表情のまま此方を見ようとしない。心が離れてしまったのだろうか。せっかく心開いてくれたのに彼を傷つけてしまった‥疑ってしまった。 「黒と別れないし離さないから」 「‥私を信じられないだろう」 「‥信じてるから裏切られたと思ったんだ。信じてなければそんな風に思わない」 「…そうか」 黒は花壇のそばにあるベンチに腰掛けて空を見上げた。あいにく今夜は満月ではない。そんな彼を俺は抱きしめた。離したら何処かへ消えてしまいそうで怖い。このまま永遠に時を止められたらどれだけいいだろうか。 撃たれて生死の境を彷徨ったけどそれと同じくらい黒は死にそうに生きていたらしい。俺が死ぬんじゃないかという恐怖を抱えて生きた心地がしなかったのだろう。そのまま死んでいたら、以前言ってたように後追いするつもりだったのかもしれない。 俺は何があってもそばを離れない。彼女ができなかったことをして、どんなに辛いことも一緒に背負い慰め合う。嬉しい時は存分に笑いたい。 彼の心を救うにはどうすればいいのだろうか。未だ癒えない傷を抱えて、それを表に出すこともできず一人で抱え込んでいる。 どんな彼も愛したいし、大好きだ。それだけは揺るがない。だから俺も黒の不器用な愛を信じたい。 「黒、大好きだよ。どんなあなたも愛してる」 「‥私も‥周が…すきだ‥」 「俺の心はとっくに黒でいっぱいなんだよ」 微笑んでそう言うと黒も微笑み返してきた。そして寒空の下でしばらく手を繋いだ。まるで初心な二人が初めて触れ合ったみたいにぎこちない。 「|欣怡《シンイー》を忘れるなんて無理だ。だが‥周以上に‥愛した者はいない」 「忘れなくていいよ。それも含めて黒だから、そんなあなたが好きだから」 |欣怡《シンイー》に出会い幸せや楽しさを知った黒が裏切られて失って、想像できないくらい辛かっただろう。だからこそ記憶に刻み込まれて消えないんだ。それを無理やり忘れろなんて言わない。だって十分なくらい黒は俺を愛してくれているんだから。 しばらくそんな風に互いの想いを確かめ合ってから部屋に戻った。今夜も俺たちは互いを求めて愛し合うだろう。

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